建築について
Concept
まず考えたのは、街並・伝統・現代・近未来を建築として表現する、ということです。屋根を瓦葺きにし、通りに面した軒庇を細かく分節化して、ファサードを街並みと違和感がないように作り込んでいます。建物は三階建てなので鉄骨造ですが、この架構には高度な現代技術を駆使しています。柱間の寸法を伝統的な建物で使われる3.6m(二間)にして柱を細くすることができたので、内部の空間も周りの木造の建物の空間に調子を合わせた雰囲気になるはずです。街並みに合わせた瓦屋根と現代技術を駆使した繊細な鉄骨造、これがわたしたちが目指したこの建物の特徴です。でも街それ自体がそうであるように、建物はここでの飲食やお店などのさまざまな活動が営まれる背景でしかありません。歴史を紡いできたこの街の一角から、近未来を感じ取れるような「今」という背景を生み出すことができたら、と思っています。
Profile
内藤 廣
建築家・東京大学名誉教授
1950年生まれ。早稲田大学大学院修士課程修了後、フェルナンド・イゲーラス建築設計事務所、菊竹清訓建築設計事務所を経て、1981年内藤廣建築設計事務所を設立。2001~11年東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻において教授、東京大学にて副学長を歴任。2007~09年度には、グッドデザイン賞審査委員長を務める。主な建築作品に、海の博物館、牧野富太郎記念館、島根県芸術文化センター、虎屋京都店、富山県美術館、とらや赤坂店、高田松原津波復興祈念公園 国営 追悼・祈念施設、東京メトロ銀座線渋谷駅など。