私たちの食卓に欠かせない道具、お箸。
自分にぴったりのお箸ってなんだろう?毎日使っているのに、あらためて見つめ直してみても、これといった正解がなかったりしませんか。
そんな思いから、壮大な試行錯誤の旅がはじまってしまったデザイナーの渡瀬さんに今回は話を聞きました。
まずお箸選びの基準を調べていくと、世のお箸屋さんが唱える「長さ」という考え方があることにたどり着いた渡瀬さん。
親指と人差し指を直角に広げ、その両指を結んだ長さを「一咫 (ひとあた) 」といいます。この1.5倍にあたる、「ひとあた半」が基準のひとつになるのだとか。
ただ、この「ひとあた半」で選んだ長さのお箸が渡瀬さんにはフィットしなかったのだそう。。。
そこで、こうなったら自分でお箸の構成要素を整理した表を作って研究をすることに!
「長さ、素材、先端の形状(四角・八角)、重さ、太さ」と項目を洗い出し、それぞれの要素がどのように働いているか調べていきます。実際に比べてみると、長さ・太さ違い、形や素材違い、サイズ感と重さの違い、などによって使い勝手が変わります。
たしかに、私も飲食店などで出してもらうお箸が「長いな」と感じるよりも、「太さ」が気になることが多いかもしれません。持ちやすい!と思ったものに出会うとちょっと感動してしまうほど、お箸って自宅のものでもなんとなく使っているかもと気付かされます。
そうして、渡瀬さん実際に長さ・太さ違い、形や素材違い、サイズ感と重さの違いを比べてみました。
実験したサンプルってあるんですか?と尋ねたら、出てくる出てくる。
なんと!!驚きの254本です!!!目の前に並んだ量に圧倒されました。
もちろん、使い心地を検証していくうえで、実際使ってみたそうですが、その内容ももはやストイック。。
わざわざ箸使いに少し手間がかかる食材を選んで検証したとのこと。食材は、あずき、焼き魚、しらたき、うずらの卵、高野豆腐。。
毎日毎日掴んでみては、データを取り整理していく長い旅のはじまりです。
そして長い長い旅が終わり、渡瀬さんの結論がでました!
まずわかったことに「長さ」は、ほとんどの人は22センチメートルがちょうど良かったのです。実は、この22センチメートルは夫婦箸の間をとった長さであるという興味深い結果。ということで長さは一定としました。
反対に、人によって大きく好みが分かれて集約しきれない、選ぶ余地として残したほうがいい要素も見つかりました。それは、持ち手の「かたち」と「太さ」。
最初に私も書きましたが、使う前でも持った瞬間「持ちやすい」って思うんですよね。
そうして渡瀬さんは、自分にぴったりの「持ちごこち」を選べるお箸をつくりあげました。
「持ち手のかたち」 は「四角」「八角」「削り」の3種類から、「持ち手の太さ」 は太め・細めの2種。
素材はほどよい重量があり質感や耐久性に優れている「鉄木」
中川政七商店が考えるお箸選びの基準は長さではなく「持ちごこち」。
太さといってもよーーく見ないとわからないくらいですが、持ってみるとやっぱり違うんです。
日本一の箸の産地である福井県若狭で、職人の手によって0.1ミリ単位にまで気を配って作られています。
中川政七商店の店舗には、お箸のマンションのような什器に、考えぬかれたお箸たちがずらっと並んでいます。塗装も拭き漆で3色ご用意しています。
1、持ち手の太さを選ぶ。
2、持ち手の形を選ぶ。
3、色を選ぶ。 (拭き漆 赤・茶・黒)
この中からご自分にぴったりのお箸をぜひ見つけてください。
毎日使っているお箸のことをこんなに考えつくした話を聞くと、あらためて毎日の道具だからこそ、自分の気に入ったものを心地よく使う大切さを考えさせられました。それでも、渡瀬さんは「もっともっと考えることがあったかも。」と、探究心は尽きません。
ちなみに渡瀬さんのお気に入りを聞いてみると「八角・太め」とのこと。
私は「八角・細め」を毎日使っています。