デザイナーが話したくなる「コーヒードリッパー」


コーヒー好きの榎本さん。仕事の合間にさっと一人分の美味しいコーヒーを入れたい。そんな思いからコーヒードリッパー作りに情熱を注ぎました。コーヒーについては、まったく詳しくない私が、道具によって変化するコーヒーの楽しみ方を教えてもらいました。



私が知っているのは、陶器や樹脂のものが多いドリッパー。ワイヤーフレームなのか不思議でした。
もちろんたくさんの種類を比べて研究した榎本さん。最終的に決め手となったのは、気軽に使えるもの。そして少しの合間の時間で美味しいコーヒーを入れたいという思い。フィルターの外側に壁を極力なくすことで、比較的コーヒーが蒸されやすく、ガスが抜けやすいのだそう。


そうして決まった、ワイヤーフレーム。

「ここがいいんですよ」とおすすめポイントをいくつも教えてくれました。
1.構造的に壁がないことで豆がじっくり、ふっくらと蒸されて、ガスも逃げやすくなります。
2.抽出時にカップの中の入れた量が見えやすいのも嬉しいポイントなんです。
3.ステンレスは錆に強く、陶磁器のように割れる心配がない。
4.とにかくさっと洗える。
5.フックにも掛けておける気軽さ。

「確かに」とうなずくことばかり。あまり見かけないワイヤー方式ですが、いろいろ便利なことばかりです。

榎本さんのお気に入りは、「とにかくさっと洗える」。最初に作るきっかけとなった、仕事の合間にさっと入れたいという願望を叶えたものです。確かにさっと洗えるし、乾きも早い。気兼ねなく使える道具というのは、毎日使う道具の重要ポイントですね。

ワイヤーフレームで作られた美しい円錐形。この形にも理由があるんです。

円錐形にすることで抽出液が一点に集中し、抽出速度が台形のものと比べ速いとされています。お湯を注ぐスピードや量によってコーヒーの味わいに変化がをもたせることができるので、その日の気分に合わせて入れ方を変えれば、いろんな味を楽しんでいただけます。

このドリッパー、もちろん素人の私でも簡単に入れることができるのですが、特別に奈良のコーヒー屋さんで試していただきました!
 
まず、おいしいコーヒーを淹れるためには、挽きたての粉を適切に蒸らすことが大切。

ワイヤドリッパーでは、蒸らしの際に発生するガスが壁に阻まれることなく抜けやすく、結果上手に蒸らすことができます。30秒ほどおいて粉が十分膨らんだら抽出を始めますが、ワイヤドリッパーは湯だまりが発生しにくいため、お湯は「細く・ゆっくりめ」を意識しながら注ぐと、よりおいしいコーヒーを淹れることができますよ。
 
朝早く、開店前に伺ったTABI Coffee Roaster。店主の田引さんがいろんなコーヒー豆や入れ方を試してくださいました。試飲させてもらうと、確かに味が変わります。コーヒーにそんなに詳しくない私でも、わかりました。

旅の途中にふらっと寄りたくなる、本格的な自家焙煎珈琲のお店。奈良にお越しの際は、ぜひ立ち寄ってみてください。


通常ドリッパーはコーヒーサーバーと一緒に使うことも多いですが、榎本さんの願望「一人分の美味しいコーヒーを楽しむ」というこだわりをつらぬき、マグカップに乗せてドリップしやすい構造を追求しました。大きさの異なるマグカップに乗せれるように、カップに当たる面はフラットに、突起物がありません。そして、たっぷり飲みたい大口マグでも対応できる直径10cmです。ワイヤーなので、入れながらカップの中がしっかり見えるので、入れすぎたなんてこともありません。


デザインや機能性を支えるのは、金属加工において高度な技術と高い品質を誇る新潟県燕市の株式会社シンドー。優れたステンレス溶接技術で、繊細なワイヤーの溶接を行っていただきました。

専用の治具を作ってもらい、それを用いて職人が手仕事で1つずつ溶接していきます。溶接する際に、ステンレスが伸縮するため、微妙に調節しながら行わないと歪みが生じるそうです。美しい均整のとれた姿は、そうした職人の技から生まれています。

日常の風景に静かに紛れ込む、昔からあるような道具を目指したという榎本さん。たしかに、飾り気はないのですが、素っ気ないわけでもなく、どこか懐かしい趣きさえあるデザインです。目指すは、「コーヒーの茶漉し」だそうです。なんの気負いもなく、毎日使って洗ってを繰り返す。コーヒーの道具ってちょっと格好良く使うイメージだった私ですが、この言葉はこの商品にぴったりだと思いました。
 
もちろん毎日榎本さんが仕事の合間にコーヒーを入れている姿を見かけます。とっても嬉しそうでとっても幸せそうです。

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