デザイナーが話したくなる|和晒、直線裁ちー工夫の詰まった「もんぺパンツ」


5年以上続いているベストセラー商品。

社内でも愛用者が多いのですが、あらためてこの履きやすさの秘密をデザイナーの河田さんに教えてもらいました。
秘密は、実は裏地にあるのだとか・・・。



この白い布、何かわかりますか?
これは「和晒(わざらし)」で、昔といっても40年ほど前くらいまではどこの家庭でも使われていたものです。長い和晒を切って、ふきんや手拭いにしたり、赤ちゃんのおむつや肌着にしていました。



堺の伝統産業、和晒を昔ながらの製法で作っている創業1931年の角野晒染株式会社。
実は、こちらの和晒との出会いがもんぺを作るきっかけになったのです。

木綿生地と聞くと、白い布を想像する方も多いと思いますが、綿は植物なので糸にして布に織られた状態では茶褐色の生地なんだそうです。そこから茶褐色の色素や、不純物などを取り除くのが晒加工。

現在、一般的に使用されている綿製品のほとんどが「洋晒加工」で機械で40分ほどで仕上げられます。
「和晒加工」は、大きな釜で緩やかな水流で約28時間ゆっくりと時間をかけて焚きこみます。したがって生地にはきついストレスはかからず、柔らかな吸水性のよい晒が特徴です。

この柔らかな風合いを持つ和晒を使って服を作れないかと考えたのです。



もんぺで使っている和晒は小巾に織られたもので、着物を作る時と同じ巾になります。
もともと着物を加工して作っていたもんぺは、小巾の布を直線裁ちして型をとっていました。布を余らせることなく、洋服にする日本人の知恵が詰まったものです。
そんなもんぺを、現代の日常着として着てほしい、和晒の良さを知ってほしいと河田さんは考えました。



綿の風合いが残っている柔らかな和晒。その和晒の中でもガーゼ生地をもんぺの裏地として使っています。裏を見ていただくと小巾の足りない部分に布が足されているのがわかりますね。
この「裏地」に使ったことが、もんぺの履き心地の秘密なんです!
赤ちゃんの肌着にも使われていたほどの布ですので、肌触りの良さはもちろん、汗の吸収と外へ逃がすことが得意なので、足にまとわりつかずさらっとした状態が続きます。



すっかり和晒に魅せられてしまいましたが、現代の生活に馴染むデザインとして表地が大切なのは、言うまでもありません。
元祖中川政七商店のもんぺの「綿麻もんぺパンツ」。ちょっと落ち感があって、やわらかい風合いだけど、家着用だけではなく、サルエルの様なおしゃれボトムスとして外で履けるように作られています。
驚いたのは、形は昔からのもんぺの型ということ。きっと今風にデザインを変えているのだと思っていたのですが、大阪の生地メーカーと一緒に、ハリ感、やわらかさ、そしてもんぺならではの強度も考えて、生地を選んでは試作して、出来上がったのです。



綿麻もんぺパンツをさらに、おしゃれもんぺとして表地を変えたのが「しましま」と「千鳥格子」。
「しましま」は、先染めのトップクラスを誇る新潟産の見附織を使用しています。
「千鳥格子」は、兵庫県播州で織られた生地で、ところどころに見られるネップと呼ばれる節がナチュラルな風合いを醸し出しています。
プリントではなく、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)の織りで柄を表現しているため、織物に奥深さと立体感が生まれます。裏地の和晒とあわせて、きちんと見えて涼しく過ごすことができます。



よくご質問いただくのですが、もんぺといえばポケットは前なんです!
初めてもんぺを着るとき、スタッフでもポケットを後ろにして履いていることもあるほど。しかし昔から前
ポケットなので、そのポイントはそのままデザインにいかしました。
大きめサイズなので、携帯電話やハンカチなど、ぽいぽいっと入れることが出来て、慣れるとけっこう便利です。



私も、綿麻もんぺパンツを履き続けて5年目。家に帰ったらすぐもんぺに着替える生活です。履きごこちがよくて、楽チンだし、そのまま出かけれるしと、もんぺって重宝するなと気軽に考えていました。
和晒や直線裁ち、河田さんが語ってくれるたびに何度も口にする「ほんとにすごいんですよ」という言葉は、先人たちの知恵への敬意が込められていました。

 

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