【作部さんに聞きました】鹿の家族 お手玉

「これを買う人の気持ちも、あんたたちのことも考えて、頑張ってるつもりやねんで」

中川政七商店を手仕事で支えてくださる「作部(つくりべ)さん」にお話を聞きました。
ちらっと見える親鹿、子鹿の刺繍がポイントの「鹿の家族 お手玉」を作ってくださっている廣瀬さん。



-今は主にお手玉の縫製を担当いただいてますが、中川政七商店でお仕事をはじめて何年くらいになりますか?
2000年にはもうしてたかなぁ。だから19~20年はやってるんちゃうかなぁ。今まで色んなもんさせてもうてたしあんたのところの色んな人と一緒にやってきたなぁ。

-お仕事をする上でご自身のルールはありますか?
縫っていく順番かなぁ。白でしょ、それからお父さん(生成)。あ、「お父さん」て呼んでんねん。それからお嬢ちゃん(赤)、その次が弟さん(水色)、お母さん(黄色)が最後。こう呼ぶ方が何かええやろ? 愛着あんねん。



-廣瀬さんがつくるとお手玉の両端が花みたいに閉じられていて綺麗ですね。一体どうやって作っているのか、近くで見てもわかりません…。
これなぁ(、縫製の)説明書の通りにやってもこんな風には閉まらへんねんで。上手いこと出来へんから自分でも考えなあかんなぁと思って、この方法を編み出した。わたしらの時代は何もなかったからね。布団なんかでも全部自分で縫ったんやで。せやから、これは本当は布団の端を閉じるときの結び方やねん。



-そうだったんですね! 驚きました…ほかには、普段どのようなことを考えながらお仕事をされていますか?
いつもやけど、ほんまに根気がいんねん。ひとつひとつ大切にせなあかんし。せやけどこの仕事が来たら夢中になって何にも手がつかなくなるんよ。毎日、これを買う人の気持ちも、あんたたちのことも考えて、がんばって働いてるつもりやねんで(笑)

-いつも本当にありがとうございます…この仕事をやってて「よかったなぁ」と感じた瞬間はありますか?
やっててよかったこと? そりゃもうみんなええわ。出来上がったときにはものすごうれしいし、「あぁ、出来た!」て思うよ。これで休憩できるから、さ、お家の草抜きしよ! とかね。

-廣瀬さん、働きすぎですよ!(笑)
草抜きするときな、いま指がバネ指(※腱鞘炎の一種)で痛いねん、まだ治ってなくて…でもミシンの返し針はこの指で押さなあかんからなぁ。それでも仕事してんねん、好きやから。
兄弟から電話かかってきたりするやろ? そしたら「あ、姉ちゃん仕事きたな!」ゆうねん。
「なんで?」聞いたら「声がちがう」って。仕事がないときは「今日なんや暗いな。仕事ないねんな」言われんねん。
…ほら色々喋ってる間に色出来上がったで!



-(一同拍手)「ころんと綺麗!お見事です」
せやろ?
これ見て。お母さんの刺繍は、よく見ると振り返ってはんねん。きっと後ろを歩く子供たちのことを気にして…やっぱりお母さんやねんなぁって。
お父さんはぎゅっと前むいてるやろ? ほら、お嬢ちゃんも弟のこと気にして後ろ振り返って…こんな可愛いものよう考えはるなぁ、ええの考えてくれはったなぁ。和むよ、いつも。いつも私がいちばん癒されてんねんで。


お話をうかがっている間、終始にこにことされていたのが印象的な廣瀬さん。
無理なお願いをすることもあり、本当にたくさんのたくさんのお手玉をすごいスピードで仕上げてくださっています。私がいちばん癒やされてると、嬉しいお言葉に、私達が伝えきれない幸せな気持ちをいただいた時間でした。

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