中川政七商店が残したいものづくり #02金物

中川政七商店が残したいものづくり
#02 金物「フック画鋲」


商品三課 岩井 美奈


恩師からいただいた宝物の葉書、お気に入りのドライ植物、我が家の壁に飾ろうと思った時に使う道具は、決まっていつも虫ピンかマスキングテープでした。
特に虫ピンは、その長い針は引っ掛けるのに丁度よく、華奢な頭は飾るものの邪魔をせず、静かに引き立ててくれるところが、わたしのお気に入りでした。
ただ飾ったときの様は申し分ないのですが、抜き差しには道具が必要で、少し重いかな?というものは、耐えられません。

静かな気配がちょうどよい虫ピンの要素はそのままに、もう少しきちんと使えるたのもしい道具があるといいのになぁ。そんなある日の小さな想いからうまれたのがフック画鋲でした。

静かな気配をもつたのもしい道具。
それは、存在感をいかになくして、本来あるべきモノとしての存在感を出せるかということ。 使われてはじめて、モノに力が生まれるような…。
そんなことを考えながら、小さき道具と向き合う旅がはじまりました。



旅の途中、茶室で使われていたという「役釘」と出会ったのは、近所のお寺で毎月行われている骨董市に出かけたときのこと。
黒衣のような静けさと凛とした美しいかたちをみたときに、大きな手掛かりをいただきました。

たかが釘、されど釘。
茶室のような余計なものを一切取り除いた空間では、釘一本さえとっても目につきやすいものです。
釘自体が主張するのではなく、花入や掛物、空間にうまく調和したものをと考えつくされてうまれたかたちから、作り手の使い手に対する繊細な心づかいが伝わってくる気がしました。

改めて先人の優れたお仕事ほど、素晴らしい教えはないと思い知らされます。
深い敬意をいだきながら、現代版の役釘を追い求めました。
家の中に前からあったかのようにすっと馴染む、留めていることを忘れるぐらいの心地よい道具になればうれしいなと思っています。
商品名:フック画鋲
工芸:金工
産地:大阪府大阪市
一緒にものづくりした産地のメーカー:株式会社ケントク
商品企画:商品三課 岩井 美奈

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本連載は、中川政七商店 渋谷店の企画展「中川政七商店が残したいものづくり」に連動し全7回にわたって配信いたしました。
原稿はすべて、作り手たちが自分の言葉で記したものです。

渋谷店の企画展では、「ものづくりの途中」をテーマに、構想段階のデザイナースケッチから試作品、産地での製造風景真など、商品が生まれるプロセスを一挙に展示しています。
全国そこかしこの工場で、工房で、小さな部品にさえ施される丁寧な仕事と作り手の静かな誇り。 わたしたちが日々向き合うものづくりの過程で感じたこと、知ったこと、こう考えて、こんな方たちとつくったんですということ。
わたしたちのものづくりをお伝えいたします。
会期は12月3日(火)まで。ぜひ遊びにいらしてください。
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