産地のうつわを気負わず毎日。「きほんの一式」の楽しみ方 <信楽焼・有田焼編>

 


益子、美濃、信楽、有田…日本はせまいながらも焼き物の宝庫。 
そんな全国の産地と、暮らしの中で気負わず使えるシリーズを作りました。
その名も「きほんの一式」。



産地ごとに、飯碗・中鉢・平皿・湯呑みもしくはマグカップをラインナップ。

一揃えあれば和洋問わずさまざまな料理に合い、朝・昼・晩と1日の食事に活躍します。




今回一緒にものづくりをしたのは、益子、美濃、信楽、有田の4産地。

それぞれどんな特徴や楽しみ方があるのか、「ここが◎◎焼ならでは!」「こういう使い方がおすすめ」などなど、作り手の皆さんに伺った産地横断インタビューを前後編に分けてご紹介します!

前編では益子焼と美濃焼をお届けしました。今回は後編、信楽焼と有田焼編をお届けします!


「素朴でありながら表情豊かなうつわ」信楽焼


▼信楽焼の「きほんの一式」とは
信楽焼の一式は、江戸時代に幕府に茶壺を献上して以来、茶壺をつくり続けてきた明山窯と制作。明山窯オリジナルの粗土ながら上品な表情の「明山土」を用いて、ざっくりとした風合いところんとした丸みある形のうつわが完成しました。

色は「並白」「黄はだ」「鉄茶」の3種類。信楽焼の雰囲気を残すため、 焼き上がりによって色や質感に様々な表情が生まれる釉薬を採用しています。使うほどに釉薬の表面の細かなひび(貫入)に色が入り、いい味わいに育っていきます。




このアイテムに注目!「信楽焼の飯碗」


「昔からの生活用具としての信楽焼らしさは、飯碗によく表れていると思います。

信楽では茶道のお茶碗も作られていて、『利休信楽』という利休好みの茶碗も有名です。

利休も愛した信楽焼の侘び寂びのある風流な味わいを、お楽しみいただけたら嬉しいです。

飯碗の小は、子どもの手にも馴染む大きさなので、小学校低学年ぐらいのお子様にも扱いやすいサイズですよ」




作り手おすすめの楽しみ方

うつわを楽しむポイントは、釉薬のあるところ、ないところの「差」だそう。


▲底や高台は釉薬をかけず、焼くと赤い「火色」が出る信楽の土味をいかしました

「無釉部分は信楽焼特有のザラっとした質感があり、その部分を程よく残すことで独特の『景色』を表現しています。

はじめはザラッとしているこの部分も使うほどに、表面がしっとりとしてくるのも愛着のわくところ。無釉部分は吸収しやすく汚れがつきやすいこともありますが、そのシミも味わいと捉えて楽しまれる方が多いです」

また信楽焼は、焼くタイミングなどによって個体差が出るのも特徴。

「私達の窯は特に個体差が出る『還元焼成』という焼き方を多く採用しています。

まるで昔の薪窯で焼いたような表情を残せて、同じものがないため、その個体差を店頭でお楽しみいただいて、自分だけの『ひとつ』を是非見つけていただきたいです」


うつわの色いろ

今回のきほんの一式シリーズでひときわ目を引くのが、信楽焼の明るい「黄はだ」色。その使い方についても、明山窯さんからアドバイスが。



「『黄はだ』は一見鮮やかではありますが、味のある渋めの色なので、どんなお料理にもしっくりと馴染みます。

朝食などにお使いいただくと、一日を明るい気分で過ごせる、そんな色ですね」

とのこと。うつわから元気をもらうというのも素敵なアイデアですね。




「印判絵柄のゆらぎが楽しいうつわ」有田焼


▼有田焼の「きほんの一式」とは

多様な絵付けの磁器で発展した、有田の高い印判技術をいかしました。江戸時代に庶民が愛した印判のうつわは印刷ならではのかすれやにじみが味わい深く、料理を明るく彩り引き立てます。

印判とは、焼成前のうつわに判や型紙、転写紙を用いて模様を写し取る絵付けの技法。この技術により絵付けにかかる時間が大幅に圧縮され、それまで高級品だった有田の染付磁器を庶民も手にすることができるようになりました。



転写とはいえ、ひとつひとつに現れるかすれやにじみが味わい深く、その表情は豊か。そんな印判のうつわに描かれるのは、子孫繁栄・長寿の意味を持つ「微塵唐草」、福を絡めとる「網目」、長寿を象徴する「菊花」。縁起のよい3つの絵柄が採用されています。

このアイテムに注目!「有田焼の飯碗」


「高台にこだわる産地としては、やはり飯碗に有田焼の特徴がよく出ていると思います」

と語るのは、有田焼のきほんの一式を手がけた金善窯さん。

「成形の工程で、一度型から抜いて削り込んで鋭角にすることで、一手間かかった美しいシルエットになりました」

薄作りの品のいい佇まいが魅力的です。



作り手おすすめの楽しみ方

「呉須と釉薬のコントラストは有田焼らしい魅力です」



「特に今回は、工業製品のような均質なイメージではなく、素材の持つ温かみを表現するために、あえて精製を抑えた陶土を使用しています。

磁器素材のもつ強度や扱いやすさは保ちながら、どこか懐かしい雰囲気のあるうつわに仕上げました。

特に微塵唐草は、和の雰囲気がありながら今の暮らしに合うデザインで、和食も洋食もどちらを盛ってもお料理が美味しく際立つと思います」



作り手も自信をのぞかせる仕上がり。確かにどこか北欧のような雰囲気も感じられます。

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産地を横断して眺めてみると、こんなに個性豊か。

作り手のみなさんの視点や思いに触れると、うつわへの眼差しもガラリと変わります。

店頭では実際にうつわが「産地横断」して揃い踏みしているので、ぜひ手にとってその違いを発見しながら、「私はこれ!」という出会いを楽しんでみてくださいね。

■前編はこちら:産地のうつわを気負わず毎日。「きほんの一式」の楽しみ方 <益子焼・美濃焼編>

産地のうつわ「きほんの一式」特集ページ


<関連の読み物>

「きほんの一式」を手がけたデザイナーの榎本が書いた記事も合わせどうぞ。
「中川政七商店が残したいものづくり #01陶磁」

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