中川政七商店が残したいものづくり #06染物

中川政七商店が残したいものづくり
#06 染物「注染手拭い」


商品三課 村垣 利枝


てぬぐいは、ハンカチより大きなキャンバス一面に大胆に絵を描くことができ、毎日持ち歩くことも、飾ることも、ちぎって使うこともできる自由な布です。
そういったところが好きで、私もてぬぐいに絵を描いて染めてみたいと考えていました。
有難いことに夢が叶い、現在てぬぐいのデザインに携わっています。
 
中川政七商店ではいろいろな技法の手ぬぐいを企画しますが、多くは「手捺染」と「注染」で作っていて、中でも注染は染めの理屈が分からないと図案を描くこともできません。
注染てぬぐいのデザインの初めの一歩は工場見学に行くところから始まります。
 
私も手拭いの産地、大阪堺の工場に見学に行きました。
 
そもそも「注染」とは20数メートルほどの生地をジャバラ状に重ね合わせ、その上から染料を注ぐことで1度に約25枚のてぬぐいを染めることができる、大阪でうまれた技法です。
工程は複雑で、大まかに説明すると以下のようなことが1工程1工程職人の手作業によって行われていきます。
 
生地の上に型紙を置き、その上から染まって欲しくない部分に防染糊を置く「糊置き」

染色台(せんしょくだい)にのせて調合した染料を注ぎながら染める「注染」

防染糊を落とす作業「水洗い」

天井の高い屋根のあるところで干す「乾燥」
 
例えばこの干支のてぬぐいもシンプルな絵柄ですが、生地を紺色に染め、ねずみのシルエットの外側紺色部分に糊をつけ、ねずみの体部分の色を白く抜きながら耳や鼻は広く染まりすぎないように境界線を糊で引き、慎重に注ぎ染めていきます。
 
どこを白く抜くか、どれくらいの幅の線で描けばいいか、色が混ざらないようにどう配色を考えるか。逆に色が混ざった美しさをどこで出すか。
技法を知りはじめて「どうやって描こうか」わくわくすることができました。
 

今お話しした工程は染めだけの話で、染める前には生地を織る人、生地を染められる状態に整える人、生地に色をつける場合は生地を染める人がいて、染める型を作る人がいます。
染めた後は洗ってしわくちゃの生地を伸ばして、カットする人。商品になるように折りたたむ人。
1枚の布はたくさんの人の手を渡り、てぬぐいとなりお店に並びます。
また、殆どの工程が分業で行われているため、一社廃業してしまうと他を探すか、自分たちでその工程を担わなければならなくなります。
先日も整理加工(生地を染められる状態に整える人)業者が1社廃業されたそうです。
てぬぐいのさんちには作り手が減りつつある危機感もあります。
 
なんとなくてぬぐいが好きだった私ですが、注染がどれだけ貴重なものか、どれだけ奥深いものか。
そのものを深く知ることでもっと好きになり、てぬぐいの見え方が変わりました。
 
注染に注ぎ込まれた思い、技術をこれからも伝えていきたいと思います。
 
商品名:注染手拭い 干支玩具 子
工芸:注染手拭い
産地:大阪府堺市
一緒にものづくりした産地のメーカー:株式会社協和染晒工場
商品企画:商品三課 村垣利枝

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本連載は、中川政七商店 渋谷店の企画展「中川政七商店が残したいものづくり」に連動し全7回にわたって配信いたしました。
原稿はすべて、作り手たちが自分の言葉で記したものです。

渋谷店の企画展では、「ものづくりの途中」をテーマに、構想段階のデザイナースケッチから試作品、産地での製造風景真など、商品が生まれるプロセスを一挙に展示しています。
全国そこかしこの工場で、工房で、小さな部品にさえ施される丁寧な仕事と作り手の静かな誇り。 わたしたちが日々向き合うものづくりの過程で感じたこと、知ったこと、こう考えて、こんな方たちとつくったんですということ。
わたしたちのものづくりをお伝えいたします。
会期は12月3日(火)まで。ぜひ遊びにいらしてください。
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