中川政七商店の人気アイテムのものづくり現場をスタッフが実際に訪ねる「さんち修学旅行」、今回はロングセラー商品「もんぺパンツ」と、これからの季節に活躍する「毛布」のものづくり現場にお邪魔しました。
前編はもんぺパンツ編。
あったか、しましま、綿麻とさまざまな種類があるのですが、実は裏地は共通して「和晒 (わざらし) 」という大阪府堺の伝統的な生地が使われています。
▲左側が、もんぺパンツシリーズ共通の裏地「和晒」
この和晒のさらさらな肌触りが、人気の理由のひとつ。
今回はそんな「和晒」の作り手、角野晒染株式会社さんを訪ねました。
メンバーを代表して、わたくし高崎オーパ店店長の早川がレポートをお届けしたいと思います!
角野晒染さんは、創業1931年。JR津久野駅から徒歩5分ののどかな風景が広がる石津川沿いに工場があります。
一帯は津久野の中でも毛穴(けな)と呼ばれる地域で、綿織物が発達した泉州地区(大阪府南部)と、大阪という大消費地とのちょうど中間に位置します。
さらに一帯を流れる石津川が水量豊かであっために、大量の水を必要とする晒(さらし)業や手ぬぐい作りが発達しました。
本日ご案内いただくのは、もんぺパンツを担当していただいている南村さんです!
角野晒染さんでは綿織物を晒す行程から、染め・裁断まですべて一貫生産でやられています。
使われているのはこんな生地
角野晒染さんが扱う和晒は糸の細さや織り方などで約20種類あるそうで、もんぺに使われている和晒は40(よんまると読みます)と呼ばれる細番手の糸で織られている和晒ガーゼを使います。
個人的には「小巾の文化」と南村さんが仰られていたのが印象的で、着物を作る時と同じ36cm巾で織られた生地がこちらにあります。
こちらの生地は和泉市の機屋さんで織られています。全盛期は300軒あったそうですが、現在はわずか30軒まで減ってしまっているそうです。
そもそも晒とは?工程を見学!
織り上がった生地には綿の脂質や不純物、糸にする際の糊が含まれているため、それを取り除く作業を行います。また、天然の綿織物は淡い茶褐色をしているため、白く晒す作業も同時に行います。これが「晒し」という作業です。
晒には洋晒、和晒とあるそうで、私自身、洋晒という言葉を恥ずかしながら初めて耳にしました。
普段着ている一般的な洋服に使われている晒生地は洋晒だそうで、40分という短い時間で熱や圧力をかけながら、ローラーにかけて晒すため、ペタンとした風合いになるのが特徴だそうです。
この洋晒と和晒はどう違うのでしょう?早速その工程を見せていただきます!
ほぼ直角に近い?!はしごのような階段を手すりを持ちながら、慎重にゆっくり登っていくと…大きな底が深い釜がありました!下を見ると吸い込まれそうになります。
こちらにミルフィーユ状に折り畳まれた織物を90度の熱を加えながら、数種類の薬品を順に投入して水で洗い流す作業を繰り返します。
3日間じっくり時間をかけて晒すことで、繊維の組織がそのまま残り、ふっくら柔らかな風合いを残した生地に仕上がるそうです。和晒の優しい風合いの秘密はこの行程にあるのですね!
3日間かけて晒した濡れたままの生地を人の手で遠心分離機にかけて脱水を行います。近くで見ていても、なかなか重そうです。
脱水が終わった生地をアイロンにかけながら、1本の長い生地にしていきます。真っ白に晒された生地はきれいで清涼感がありますね!思わず手にとって触れたくなります。
機械を使っているとはいえ、人の手が作業の間、間に入っているところを目にすると、もうこれは手作業と言っても良いのでは、と感じました。
和晒は、この優しい柔らかさを活かしてさまざまな日用品に使われています。
実際に、和晒の特徴である通気性、吸水性を生かした角野さんの商品たちを見せていただきました!
並ぶのは手ぬぐいや寝間着、おくつろぎ着という名前のついたホームウェアなど。「おくつろぎ着」という商品名を聞いただけで、思わず買いたくなってしまいました(笑)
他にも和晒は、日本料理で包丁を拭いたり、蒸し料理にも使われているとのこと。時代が変わっても、優れた機能性が活かされ続けているのですね。
もんぺパンツの気持ち良いはき心地は、この柔らかで通気性の良い和晒にあり。
日本ならではの文化である和晒を、もんぺパンツを通して沢山の方に触れていただいていること、嬉しくなりました。
実際に目で見た和晒の魅力をもっとお店でお伝えしていかなくては、と使命を感じた1日でもありました!
さて、午後からは毛布のまち、泉大津へ。
中川政七商店で「泉大津の2重織毛布」や新商品「泉大津の毛布でつくったかいまきウェア」「泉大津の毛布でつくったルームシューズ」の生地を作っていただいているメーカーさんにお邪魔します!
2019-11-09