中川政七商店が残したいものづくり
#07 織物「かや織」商品一課 田出 睦子
わたしが中川政七商店で働きはじめた20年前、かや織で作った「花ふきん」は既に販売されていました。
漆芸を学んでいて、古い蚊帳(かや)を漆作品の下地に使うことも多かった私にとって、かや織は馴染みのある素材でした。
そのかや織が、自分の出身地である奈良県で織られていると「花ふきん」を通じて知り、俄然愛着が湧いたのを覚えています。
その後、かや織をもっと広めたいという思いから、様々な柄をプリントしたふきん、人が寝られるぐらいのケット(発売当時は「大仏ふきん」という商品名でした)、フェイスタオル、バスマット、お菓子の袋など、色々な商品に展開を広げてきました。
「花ふきんが気持ちいいから首に巻いているの」というお客様が多い中で、何とかつくってみたいと思っていたアイテムが、ストールです。
目が粗いので水を吸ってもすぐ乾くかや織は、ふきんやタオル類には良いのですが、一方で目ズレの恐れがあり、糊をつけないと縫製が難しい素材。
肌触りを考えると、ストールにするには糊が無いほうが都合が良い。どうにか糊をつけずに済む方法はないものかと奈良の機屋である大和織布さんに相談して「かや織ストール」が生まれました。
生地の両端の糸密度を高くして「耳」を太くし、中央にも端と同じ組織を入れ中央で半分に折り両端を縫うことで、糊がなくても縫製に耐えられるように仕上げています。
かや織のふんわりした風合いを損なうことなく、安心して使えるストールに仕上がったと思っています。
また、生地を通して向こう側がほんのり見えることも、かや織の良い特徴です。
生地に塩化ビニールを貼ることで、ほんのり透けるが丈夫な素材を開発し、小物や書類を整理するポーチも作りました。
これからも多くの人に「かや織」の良さを知ってもらえるよう、新たな挑戦をしていきたいと思います。