小さい中にいくつもの工芸が詰まっています
発売から3年目を迎えた『小さなお月見飾り』。
飾ると秋の訪れを感じられ、サイズ感もほんとにちょうどいい。
毎年、素敵なお飾りだなと、素直に感心してしまう商品です。
3年目を迎えられたということは、毎年皆様に愛されている証拠。ふと思い返すと、
「いろんな技術が詰まっているのに、そのことを、お伝えしきれていないのでは‥‥」
ということに気づき、改めてデザイナーの岩井さんに企画当時のことを聞きました。
まず目につくのが、黄色い手まりです。
「これは、香川県の伝統工芸『讃岐かがり手まり®』です。
小さな手まりですが、すごいこだわって作られているんですよ」と岩井さん。
「『讃岐かがり手まり®』が大切にしているのは、糸をいじめない、ということ。
月に見立てた黄色は、木綿糸を丁寧に草木染めした色です。糸をかがるときも
極力しごかないようにして、毛羽立ちが抑えられています。出来上がったものを見ると、
木綿にもほのかな光沢があることに気づかされます」
見れば見るほどやさしい色合いが、とても魅力的ですよね。
手まりの中には、香木(白檀・丁子・龍脳など)をチップにした天然香原料が入っていて、
ほのかに日本らしい香りが楽しめるのもうれしいところです。
木のお団子について尋ねると、
「イチョウの木を使って、奈良の工房で作っています。四角い木材を、洗濯機のような
ドラムで回転させて丸く削っていくんですが、同じ木でも場所によって硬さが違うので、
同じ大きさには仕上がりません。研磨の細かさを変えて何回もドラムにかけて木肌を
なめらかにして、最後は転がらないように底を平らに削っています」とのこと。
お団子の大きさが少しずつ違うのは、それぞれの木の持つ個性なんですね。
後ろのススキの飾りも、シンプルですが存在感があります。
「これは、水引の産地、長野県飯田市で作ってもらいました。
どんな材料でどうやったらススキに見えるのか、結び方はかなり試行錯誤しました。
最終的には組紐の稲穂結びをヒントにしています。」
そういわれると、確かに稲穂の形だ!と気がつきます。
「十五夜は、月を眺めるだけでなく、五穀豊穣を祝い、実りに感謝するお祭り。
ススキは、もともとは稲穂に見立てて飾ったものともいわれています。
この水引飾りに、そんな原点とのつながりを発見できた時はうれしかったですね。」
と岩井さんも3年前を思い出してにこにこしていました。
飾り台として用いている三方も、実は飾り物の高さや大きさに合わせて
通常のものより少し低く作ってもらっているのだとか。
ちょっとのことかもしれませんが、細部にこだわって職人さんたちと試行錯誤して
できあがった結果、出来上がった愛らしい姿なんですね。
小さな中に、いくつもの工芸が詰まったお月見飾り。毎回岩井さんのものづくりの話は、
とてもおもしろいし感心することだらけです。
我が家にも飾って3年目。私は毎年、「ほほぉ」とほれぼれしながら、じっくり眺めながら、
触りながら飾っています。すでにお持ちの方には、ぜひあらためてよく見ていただけたらうれしいです!