便箋をちぎる間の幸福感。名尾手すき和紙の文綴箱

日本各地から五十を越える作り手たちが集う中川政七商店主催の合同展示会「大日本市」。 その運営を担うメンバーは、日々、全国の作り手と交流し、年間何百という品物に出会う、いわば「いいもの」の目利き集団。 この連載では、そんな彼らが「これは」と惚れ込んだ逸品をご紹介。実際に使ってみての偏愛を語ります。

語り手:松山 千恵

中川政七商店主催の展示会「大日本市」の実行委員。 8年間の直営店長を経て、全国の観光地で提携する土産店「仲間見世」 のアドバイザーを務める。 たくさんのモノに触れ合うなかで、それぞれの良さを発見し、自分らしい物と量を整えていく暮らしが好きです。

ブランド:名尾手すき和紙  
推しの逸品:文綴箱

原料の栽培から一枚の紙ができるまで、すべての工程を佐賀の名尾で行う手すき和紙のプロダクトブランドです

大日本市の会場で名尾和紙さんのブースに伺うと、作り手の谷口さんが文綴箱の中から便箋を取り出して、ちぎってみせてくれます。



文綴箱は、丈夫でやわらかな手すき和紙の質感を、時間をかけてやりとりする手紙の道具に仕立てたセット。外箱も、厚手の手すき和紙でできています。


箱の中には「ちぎり一筆箋」「ちぎり便箋」「すき込み封筒」の3種類が入っています

便箋同士がうっすらつながっていて、使う時に自分で必要な分だけちぎって使うのです。



私は手紙を書く時、このちぎり便箋に両手を添えて、ゆっくりと1枚を剥がす瞬間が、とても好きです。

ビリビリ、と破れていく間に、何を書こうかなと気持ちが手紙に向かい、自然と背筋が伸びます。ちぎった部分は和紙の繊維がフワフワとして、シンプルな便箋にちょっと個性が生まれます。



特別に字がきれいではない私ですが、このフワフワ感が、文字をやわらかく、そして生き生きした印象にしてくれるような気がして、書く時間が楽しいです。すべりのいいペンを使っても、にじみにくいのも気に入っています。

本のようにしまえて、補充しながら永く使えます

数年前から、家族や友人の贈りものに手紙を添えるようになり、便箋を使う機会が増えました。

ただ、ものはあまり多く持ちたくない方で、便箋のような「いざという時」のアイテムは、気に入ったものを必要な分だけ置いておきたい、と思います。

その点、名尾和紙さんの文綴箱は本のようにしまえて、空間を邪魔せずに置いておけます。


本型の文箱は、本棚にもしまえる

普段は気にならないけれど、机の上に置くと箱入りでいい佇まいです。便箋、封筒と中のアイテムも個別に補充できるので、永く活用できます。



そして、いざ使うときにはビリビリ、と便箋をちぎって、和紙の手触りと音を感じながら静かに手紙に向かう。



この瞬間の気持ちよさは特別です。手紙を書く時間がいっそう好きになりました。

これは、自分のそばに置いて、ずっと付き合ってくれるレターセットだと思っています。



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