力いらずで料理の主役になれる大根おろしができる。紀州新家のおろし金

日本各地から五十を越える作り手たちが集う中川政七商店主催の合同展示会「大日本市」。 その運営を担うメンバーは、日々、全国の作り手と交流し、年間何百という品物に出会う、いわば「いいもの」の目利き集団。 この連載では、そんな彼らが「これは」と惚れ込んだ逸品をご紹介。実際に使ってみての偏愛を語ります。

語り手:高倉 泰

中川政七商店主催の展示会「大日本市」のディレクター。 日本各地の作り手と一緒に展示会やイベントを作りあげる。 古いものを生かした生活が好きで、奈良で築150年の古民家を改築し、 妻と2人の子どもと暮らしています。山形県出身。風呂好き。日本酒ナビゲーター認定者。

ブランド:紀州新家  
推しの逸品:おろし金

300年以上の歴史のある日本固有の純銅手打ちおろし金を、従来にないデザイン・作業性を追求。又、目立ての種類は通常3種類程ですが、紀州新家では家庭用・プロ用を含め、20種類以上の目立てを施しております。2018年 グットデザイン賞 受賞

大根おろしの食べ方が変わった


家で大根おろしを擦るのは、いつも私の担当です。

辛みが好きなので、先端の方を擦って薬味として使うことが多かったのですが、紀州新家 (きしゅうしんけ) さんのおろし金を使って、大根おろしの食べ方が変わりました。
 

ミシュラン店の料理人も愛用する紀州新家のおろし金


もともと家では樹脂製の、トレイ付きのすりおろし器を使用。おろし金を使うのは初めてで、本格的な調理台所道具を家に迎えた感じが嬉しかったのを覚えています。

使ってみると、いつもと力の掛け方が違うのに気がつきました。台置きタイプは腕を台と並行に動かすのでぐっと体重をかけて擦っていましたが、これは腕を上下に動かせば、力を入れずに擦ることができます。



私は小を選びましたが、持ち手が幅広で安定感があるので、家庭用には小でも十分使いやすい印象です。


大日本市の展示会場での様子。幅のある持ち手はホールドしやすく、力を入れやすい

料理の主役になれる大根おろし


一番の驚きはやはり食べた時でした。口に運ぶとフワフワとした食感で、大根の粒感がどこにもありません。まるで料亭に出てくるような、なめらかな舌触りです。

これは、料理の主役になれる大根おろしだ、と思いました。

口当たりがいいので、食べていて気持ちがいい。この時は先端を擦って薬味にしましたが、今度は真ん中や上の方を擦ってみると、大根の甘みが口いっぱいに広がります。夏はおろしうどん、冬はみぞれ鍋。たっぷり使って大根おろしを主役にした料理を作りたくなります。そのまま酒のつまみにも。

独学で生み出した直角の目立てに秘密あり


伝統的な調理器具であるおろし金は、作り手の減少で存続の危機にあります。作り手の新家崇元 (しんけ たかゆき) さんは、それを知って全くの異業種から独学で作り方を研究。斜め45度にいれるのが一般的な「目立て」を、直角に変えて誕生したのが、このおろし金です。


製造時の打ちにくさから従来開発されてこなかった直角の目立て


ここが美味しさの秘密で、新家さんいわく「目の一つ一つが刃となってしっかりと食材に当たるので、食材のよさを活かしたまま擦りおろせる」とのこと。直角だと目詰まりしにくいので、水の力だけで洗いやすいところも気に入っています。

使ってみて分かった、擦る時や洗う時、そして何よりも食べる時の心地よさ。プロの心意気に唸った逸品です。


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