自分で絵付けするのも楽しい、新しい奈良土産「鹿コロコロ」

日本各地から五十を越える作り手たちが集う中川政七商店主催の合同展示会「大日本市」。 その運営を担うメンバーは、日々、全国の作り手と交流し、年間何百という品物に出会う、いわば「いいもの」の目利き集団。 この連載では、そんな彼らが「これは」と惚れ込んだ逸品をご紹介。実際に使ってみての偏愛を語ります。

語り手:吉岡 聖貴

中川政七商店の店舗開発、企画展ディレクション、新規プロジェクトなどを担当。
モノとの出会いには公私の境無く貪欲で、気になる土地を訪ねては、心躍るクラフトを連れ帰り生活に取り入れてみるのが日課。生活を楽しみ、旅をたしなみ、美しいものを大事にしています。
熊本出身でも酒には弱く、珈琲や茶を嗜む今日この頃。

ブランド:Good Job!センター  
推しの逸品:鹿コロコロ

デジタル工作技術と障害のある人のすぐれた手仕事を組みわせ、民芸の新しい可能性を提案します。3Dプリントによる細かなディテールのある張り子、貴重な春日大社境内の杉を活用したものづくり展開しています。

我が家には全国から集めた郷土玩具を飾るコーナーがあるのですが、中でも思い入れのあるひとつが奈良の「鹿コロコロ」です。郷土玩具というと古くから各地にあるイメージかもしれませんが、こちらは2016年に誕生した「新郷土玩具」。実は僕も開発に携わらせてもらいました。

奈良を代表する観光名所、東大寺や春日大社に向かう道沿いのお土産やさんには、よく「ビニール風船の鹿」が売られています。この今の奈良土産と、昔あった奈良の郷土玩具「張子鹿」を掛け合わせて誕生したのが、鹿コロコロです。



実は鹿コロコロは、世界初の「デジタル張子」。今はなき奈良の伝統工芸(張子)を、現代のテクノロジー、3Dプリンターを駆使して蘇らせました。張子づくりに欠かせない「木型」は、年々作れる職人さんが減ってきています。それを3Dプリンターで作ることで、型を安定的に、しかもスピーディーに量産できるようになりました。


立体作品を3Dスキャンしたデータをもとに3Dプリンターから型を造形。赤いものがその型

これを可能にしてくれたのが「Good Job!センター香芝」さんです。奈良市でコミュニティ・アートセンターを運営し、アートを通して障がいのある人の社会参加と仕事づくりをしてきた「たんぽぽの家」さんが、新たな拠点として2016年にオープンされた施設です。


左下が3Dプリンターで起こした型。真ん中が型に紙を貼り付けて彩色できるようにした状態

成形はデジタルな一方で、彩色のための紙貼りや組み立て、絵付けはひとつひとつ全て手作業。同じ色柄でも微妙に目の大きさや模様のつけかたが違って、一つとして同じものがありません。



お気に入りの1匹を選んでもらうのも楽しいですが、パーツがあれば子どもから大人まで誰でも楽しく作れるようになっているので、自分で作ってみたい人には張り子キットがおすすめです。鹿コロコロを通じて、今まで郷土玩具を知らなかった人も、その魅力に触れてもらえたら嬉しいです。


「バイヤーに聞いた、推しの逸品」トップに戻る

その他の記事

お知らせTOPに戻る