デフォルメされたフクロウの姿がとにかく愛らしいです。筑前津屋崎人形巧房のモマ笛

日本各地から五十を越える作り手たちが集う中川政七商店主催の合同展示会「大日本市」。 その運営を担うメンバーは、日々、全国の作り手と交流し、年間何百という品物に出会う、いわば「いいもの」の目利き集団。 この連載では、そんな彼らが「これは」と惚れ込んだ逸品をご紹介。実際に使ってみての偏愛を語ります。

語り手:吉岡 聖貴

中川政七商店の店舗開発、企画展ディレクション、新規プロジェクトなどを担当。
モノとの出会いには公私の境無く貪欲で、気になる土地を訪ねては、心躍るクラフトを連れ帰り生活に取り入れてみるのが日課。生活を楽しみ、旅をたしなみ、美しいものを大事にしています。
熊本出身でも酒には弱く、珈琲や茶を嗜む今日この頃。

ブランド:筑前津屋崎人形巧房  
推しの逸品:モマ笛

当工房は安永の頃(1777年)に福岡県・福津市で生活土器を製作したことが始まりで、次第に素朴で温かみのある土人形を作るようになりました。原色を多く用いるのが特徴です。人形の型は、江戸時代の型も代々受け継がれています
我が家の郷土玩具コーナーでひときわ異彩を放つのがこのモマ笛です。昔ながらの赤土と、胡粉の白の素朴さ、ツヤツヤと輝くオデコに大きく丸い黒目。民芸品っておどろおどろしいものが多かったりするんですが、これは素朴な雰囲気がありつつ現代風にデフォルメされていて、とにかく愛らしい。モチーフは「不苦労」「福来」「福籠」「福老」など様々なめでたい当て字がある縁起のいい鳥、フクロウです。



作り手は、代々受け継がれてきた型枠を用いて、今もなお手作りで人形を作り続けられている筑前津屋崎人形工房。産地である福岡県福津市津屋崎の一帯ではフクロウのことを「モマ」といい、江戸時代から縁起物として地元の宮地嶽神社でモマ笛が授与されていました。吹くとフクロウのように「ホーホー」と音がします。


尻尾の部分が吹き口になっている

郷土玩具って一般的には子どもの成長や商売繁盛などの縁起を担ぐものですが、このモマ笛はそれだけではありません。かつてはお年寄りがこの笛を吹いて気道を広げ、食事の喉の通りを良くするために使っていたとも言われています。

工房に初めて伺った7年前は、7代目の原田誠さんおひとりで作られていましたが、数年前に8代目の息子さんも加わって新商品なども手掛けられるように。郷土玩具の作り手が全国的に少なくなっている中、親子二代で作られている全国でも貴重な工房です。

そばに飾って、時々吹いて、いつでも可愛がっていたくなるモマ笛。これからも末長く残ってほしい郷土玩具です。



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