日本各地から五十を越える作り手たちが集う中川政七商店主催の合同展示会「大日本市」。 その運営を担うメンバーは、日々、全国の作り手と交流し、年間何百という品物に出会う、いわば「いいもの」の目利き集団。 この連載では、そんな彼らが「これは」と惚れ込んだ逸品をご紹介。実際に使ってみての偏愛を語ります。
2020-10-28
働きながらでもワッパ使えるよ、と言いたいです。大館工芸社の「曲げわっぱ弁当箱」
ブランド:大館工芸社
丸太の買い付けから製材、曲げ加工、桜皮縫い、底入れ、仕上げまで一貫して行なっています。曲げわっぱをつくるのは、伝統工芸士5名を含む26名の職人。伝統的な曲げわっぱはもちろんのこと、現代のライフスタイルにあったさまざまなデザインの曲げわっぱをつくり続けています。曲げわっぱのお弁当箱、憧れはありつつ、手入れがいろいろ大変そうかなとずっと手が出せずにいました。
でも同じ部署のメンバーが大館工芸社さんと商品開発をしているのを間近に見て、熟練の職人さんが柔軟に新しいものづくりにチャレンジされているのに感動。これは使わねば、と年明けから曲げわっぱ生活を始めました。
素材は樹齢100年以上の秋田杉。使うたび端正な柾目 (まさめ) にほれぼれします。きれいに真っ直ぐなんです。
秋田県の伝統的工芸品「大館曲げわっぱ」のお弁当箱
使い始めるとふたつの変化がありました。ひとつはお弁当支度の時間です。
お弁当を詰める時間が毎日の楽しみに
私はお弁当を詰めるのがあまり上手くないのですが、うつわの曲線と木目のやわらかさに、普段のおかずを2品くらい詰めるだけでもパッと見栄えがします。だんだん詰めること自体が楽しくなって、お弁当のために毎日の料理を考えるようになっていきました。うすく塗装がされているので煮物など汁っぽいものも不安なく入れられます。お昼ご飯をゆっくり食べるようになりました
もうひとつの変化はお弁当を食べる時間に。フタを開けておかずを口に運ぶ瞬間に、ふわっとほのかに杉の香りがします。これが嬉しくて、お昼ご飯をゆっくり食べるようになりました。今ではお弁当が仕事と仕事の間に一拍おく大事な時間になっています。こんな日常の変化も、ワッパさまのおかげです (笑) 。働きながらでも、曲げわっぱは使える。
気になっていたお手入れも、使ったらすぐに洗う、を心がけていれば大丈夫だとわかりました。仕事から帰って家で乾燥しておくと、ちょっとした水分の跡も、自然と消えていきます。年明けから使い出していますが、くたびれた感じもなく、シミひとつありません。はじめこそ慎重に扱っていましたが、意外とラフに使っても大丈夫だぞとわかって、使う日がどんどん増えていきました。使いやすさと楽しさに、いつからか「もう戻らない、大丈夫。自分の生活に取り入れられる」と確信。今では外に食べにいく日以外は、毎日のように曲げわっぱにお弁当を詰めます。
こんなことなら不安がらずにもっと早く始めればよかった。働きながらでもワッパ使えるよ、と言いたいです。
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