日本各地から五十を越える作り手たちが集う中川政七商店主催の合同展示会「大日本市」。 その運営を担うメンバーは、日々、全国の作り手と交流し、年間何百という品物に出会う、いわば「いいもの」の目利き集団。 この連載では、そんな彼らが「これは」と惚れ込んだ逸品をご紹介。実際に使ってみての偏愛を語ります。
2020-10-22
我が家の鍋の使い方を広げてくれました。長谷園の土鍋
ブランド:長谷園
長谷園は、天保3年(1832年)に築窯して以来、伊賀焼の伝統と技術を継承して 参りました。「作り手は真の使い手であれ」の精神のもと、進化するライフスタイル を感じながら土鍋の可能性を追求してまいります。冬の定番といえば鍋料理ですが、長谷園の「ヘルシー蒸し鍋」を使っている我が家では、煮込む以外にも様々な料理レパートリーがあります。
湯気が出てから3分。あっという間に蒸し料理の完成
まず、アイテム名の通り蒸し料理に。料理と言っても豚や鶏肉、野菜を入れるだけの簡単調理ですが、水を入れて沸騰させてから内蓋の上に具材を載せて蒸せば、3分くらいであっという間に完成です。火を止めてもしばらく余熱で温かいので、鍋のまま食卓に出して熱々をいただきます。フタを開けて湯気が立ち上る瞬間は「料理ができた」という感じで贅沢な気持ちに。そのまま食卓に出せるので洗い物も少なくすみます。
油いらずで素材の味が凝縮
入れるのは葉物や根菜の他にオクラ、ししとう、ピーマンも美味しいです。蒸すと野菜の味が濃くなり、ピーマンがあまり得意でない子どもたちも、いつもより箸がすすみます。いろいろ試した中で私のおすすめはトマト。熱を加えると甘くなるといいますが、ぎゅっと旨味が凝縮されたような味です。個人的にはしゃぶしゃぶより美味しいんじゃないかなと思っています。
タレには醤油と大根おろし、生姜、ポン酢をお好みで。お酒が好きで二日酔いすることもありますが、そういう日もこの鍋で蒸し料理にすると、油を使わないので胃もたれせずに、素材の味が体にしみ渡ります。
もう一つの楽しみは、蒸すと同時に内蓋の下に出来上がるスープ。お肉や野菜から出汁が出て、優しい味わいです。ここに醤油やごま、生姜を加えたり、鶏ガラスープを入れて中華風にしたりして楽しみます。
吹きこぼれにくく、箸で取る時にもちょうどいいサイズ
もうひとつ我が家の定番は、土鍋うどん。茹でるのは私の仕事です。出身である山形の郷土料理「ひっぱりうどん」をよく食べているのですが、普通の鍋で茹でるとあっという間に吹きこぼれるので、いつも火加減に気を配ったり、差し水をしたりと、気を配らなければいけませんでした。それがこのヘルシー蒸し鍋は返し部分が吹きこぼれ防止にちょうどよく、10分間おまかせで簡単に茹で上がります。土鍋の背も低いので子どもでも箸で取りやすく、食べやすそうです。我が家のもう一つの土鍋「かまどさん」
実は、我が家に長谷園の土鍋は2台。ヘルシー蒸し鍋と一緒に、炊飯用の土鍋「かまどさん」も持っています。こちらはご飯に熱がうまく伝わるように丸っこい形で、時間に余裕がある時や週末に使います。火加減の調整がいらず、短時間で失敗なくご飯が炊けるのが秀逸です。
「かまどさん」は炊きたてはもちろんですが、冷めた後もベタッとならず、美味しさが続きます。このごろ炊飯器もどんどん進化していますが、やっぱり土鍋にしかない美味しさがあるなと感じます。
2台とも伊賀焼らしい肉厚な質感や釉薬の深みのある佇まいもよく、テーブルに置くと風情が出ます。これからの季節、鍋料理に加え、蒸し料理にひっぱりうどん、かまどさんの土鍋ご飯と、我が家は毎日土鍋が食卓に並びそうです。
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