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茶筅
抹茶椀
ハヤシ ユウジ Yuji Hayashi

ハヤシ ユウジYuji Hayashi

  • 奈良 | NARA
  • 京都 | KYOTO
  • HS オーナー | HS Owner

奈良と京都を拠点に、現在は4つのギャラリーとショップを展開する「HS」のオーナー。民藝と茶の湯、アートと工藝を融合・調和させる考えを持ち、空間づくりにこだわり続けています。

近年では、店舗の空間デザインや家具デザイン、住宅のリノベーションにも携わり、さまざまな分野でその表現を広げています。

暮らしの中の茶の湯

美しい生活道具を暮らしに取り入れること。それは、暮らしに喜びと感動をもたらしてくれます。日々使う道具をしっかりと選び、暮らしを楽しむこと。そんなきっかけを与えてくれる場所「HS」。

今回は「暮らしの中の茶の湯」についてお話を伺うべく、「HS-nara-」を訪れました。

訪れたのは、奈良県生駒郡安堵町。法隆寺のほど近く、静かな場所に「白い箱」が佇んでいました。

奈良と京都を拠点に、現在は4つのギャラリー空間を構えるHSの、まさに原点とも呼べる場所「HS-nara-」です。

出迎えてくださったのは、オーナーのハヤシユウジさんと奥様のユキさんでした。

HS-nara-

白い箱の中に広がる、
モノたちと心がつながる場所

まずは、ギャラリーについてお話を伺うべく、白い箱の中へ足を踏み入れました。

店内は潔い白い空間。お二人が実際に作り手に会い、自身の感性で選んだモノたちがひとつひとつ丁寧に並んでいました。

25歳で民藝の思想に深く影響を受けたハヤシさんは、29歳で大阪にHSをオープンします(現在は京都に移転)。その後、奥様の故郷であるこの地に魅了され、HS -nara-を開店。
店内は潔い白い空間

茶の湯との出会い

今では茶室を作るほど、茶の湯が暮らしの中に自然に息づいているハヤシさんご夫婦。しかし、HSを始めた当初、茶の湯に対する意識はほとんどなかったと言います。

茶の湯との出会いは一体どんなものだったのでしょうか?

「僕たちの日々に茶の湯が調和するきっかけをくださったのは、奈良の陶芸家・辻村唯さんです。」

「何年も前、初めて唯さんの工房に伺った際に、唯さんは自然釉の大きな鉢に炭をくべ、鉄瓶を置き、食事もするテーブルの上で自ら作られた抹茶碗でおもてなしをしてくれました。その自然体な姿に深く感動し、これこそが僕が大切にしたい日々の茶だと強く感じました。」

「お昼ごはんからお茶まで、唯さんのもてなしは全てが自然体でした。その景色は、僕が影響を受けた民藝の景色と何も変わらないじゃないかと、気づけば自らの心と意識が変わったことを鮮明に覚えています。」

「僕たちと茶の湯の出会いは、こうして店を営み、日々の仕事と暮らしを必死に過ごす中で、自然と訪れました。」

茶の湯との出会いのきっかけとなった辻村唯さんの作品(右)
辻村唯さんの作品(右)

心でつながる茶道具たち

ハヤシさんが大切にしているのは、「自分が好きな道具」を使うこと。「それらは単なる物ではなく、心でつながったモノたちであるべきだという信念です。」

そんな信念を体現するかのように、ハヤシさんがご自身の心とつながりを感じ、日々の暮らしの中で愛用している茶道具たちの一部を見せていただきました。

こちらはハヤシさんの私物である抹茶碗。

ほんの一部に過ぎませんが、まだまだお気に入りの品々がたくさんあるとのことです。

石井直人さん、鯉江良二さん、辻村唯さん、坂口恭平さん、そして台湾の陳正川さんなど、名だたる作家たちの抹茶碗を愛用中。中にはご自身が石垣島で作った抹茶碗も。
名だたる作家たちの抹茶碗
梅花皮が魅力的な坂口恭平さんの抹茶碗
坂口恭平さんの抹茶碗
石井直人さん、鯉江良二さん、辻村唯さん、坂口恭平さん、そして台湾の陳正川さんなど、名だたる作家たちの抹茶碗を愛用中。中にはご自身が石垣島で作った抹茶碗も。
名だたる作家たちの抹茶碗
梅花皮が魅力的な坂口恭平さんの抹茶碗
坂口恭平さんの抹茶碗
石井直人さん、鯉江良二さん、辻村唯さん、坂口恭平さん、そして台湾の陳正川さんなど、名だたる作家たちの抹茶碗を愛用中。中にはご自身が石垣島で作った抹茶碗も。
名だたる作家たちの抹茶碗
梅花皮が魅力的な坂口恭平さんの抹茶碗
坂口恭平さんの抹茶碗

白と黒、二つの茶室

HS-nara-には、現在、ギャラリースペースのほかに二つの茶室があります。

一つは、ギャラリーの2階に静かに佇む白い茶室「夕月山窓(ゆうげつさんそう)」。

もう一つは、ギャラリーの前にひっそりと佇む黒い茶室「元ノ庵(もとのあん)」。どちらも、ハヤシさんご自身がデザインし、作られた茶室です。

はじめに手掛けたのは、ギャラリーの2階に位置する白い茶室。「ハシゴで上がるその入口が躙口(にじりぐち)です」と、ハヤシさんが紹介してくれました。

室内の西側には、横長の大きな窓があり、夕日が沈む美しい景色が広がります。そのため、この茶室は「夕月山窓」と名付けられました。
夕月山窓
天窓からは柔らかな光が注ぎ、まるで時間がゆっくりと流れているかのような感覚に包まれます。
天窓
室内の西側には、横長の大きな窓があり、夕日が沈む美しい景色が広がります。そのため、この茶室は「夕月山窓」と名付けられました。
夕月山窓
天窓からは柔らかな光が注ぎ、まるで時間がゆっくりと流れているかのような感覚に包まれます。
天窓
室内の西側には、横長の大きな窓があり、夕日が沈む美しい景色が広がります。そのため、この茶室は「夕月山窓」と名付けられました。
夕月山窓
天窓からは柔らかな光が注ぎ、まるで時間がゆっくりと流れているかのような感覚に包まれます。
天窓

その数年後、ギャラリーの前に黒い茶室が作られることになりました。

「元ノ庵」と名付けられたその黒い茶室は、千利休が手がけた待庵(たいあん)のような小さな空間です。

「作る前に実際に待庵を訪れ、そこから影響を受けました」と、ハヤシさんは語ります。

キム・ホノさんの書と石井直人さんの一輪挿し。
黒い茶室
道具
キム・ホノさんの書と石井直人さんの一輪挿し。
黒い茶室
道具
キム・ホノさんの書と石井直人さんの一輪挿し。
黒い茶室
道具

「元ノ庵」には、菱形の窓が一つ、土足で椅子に座るスタイル、そして照明も備わっています。

先人の思想を学び、それを自分なりに咀嚼し表現した結果、この自由な空間が生まれました。何ものにもとらわれず、ハヤシさんの感性から生まれたこの空間は、まさに現代の茶室そのものです。

菱形の窓
昔の茶人が茶杓を自分で削っていたように、ハヤシさんも自ら茶杓を削ることがあるそうです。茶室から抹茶碗、茶杓、そして書まで、すべてを自ら作り上げ、まさにハヤシさんが表現する現代の茶の湯の形を体現しています。
現代の茶室そのもの
菱形の窓
昔の茶人が茶杓を自分で削っていたように、ハヤシさんも自ら茶杓を削ることがあるそうです。茶室から抹茶碗、茶杓、そして書まで、すべてを自ら作り上げ、まさにハヤシさんが表現する現代の茶の湯の形を体現しています。
現代の茶室そのもの
菱形の窓
昔の茶人が茶杓を自分で削っていたように、ハヤシさんも自ら茶杓を削ることがあるそうです。茶室から抹茶碗、茶杓、そして書まで、すべてを自ら作り上げ、まさにハヤシさんが表現する現代の茶の湯の形を体現しています。
現代の茶室そのもの

瞬間の共有

「元ノ庵」の小さな空間は、1人と1人が対峙するような作りになっています。静かな暗闇の中に、一筋の光が差し込む瞬間を共有しているような感覚を覚えます。

ハヤシさんご夫婦は、この空間でお互いをもてなしたり、正月にはお客様に一服していただいたりします。また、組み立て式の炉を使っているため、ときにはそのすべてを外し、展示空間として使用することもあるとのことです。

ご自身が石垣島で作られた抹茶碗で、一服点ててくださいました。
ご自身が石垣島で作られた抹茶碗
「トースターで温めると美味しいんです」と奥様が何気なく用意してくださった〝干し芋〟。その一品が、暗闇の中に浮かび上がり美しい茶の湯の景色でした。
干し芋
ご自身が石垣島で作られた抹茶碗で、一服点ててくださいました。
ご自身が石垣島で作られた抹茶碗
「トースターで温めると美味しいんです」と奥様が何気なく用意してくださった〝干し芋〟。その一品が、暗闇の中に浮かび上がり美しい茶の湯の景色でした。
干し芋
ご自身が石垣島で作られた抹茶碗で、一服点ててくださいました。
ご自身が石垣島で作られた抹茶碗
「トースターで温めると美味しいんです」と奥様が何気なく用意してくださった〝干し芋〟。その一品が、暗闇の中に浮かび上がり美しい茶の湯の景色でした。
干し芋

僕にとって茶の湯は癒し

「僕にとって茶の湯は癒しです。美しいものと同じように、心で繋がることです。心で繋がっているからこそ、茶道具にも茶室にも、そして茶の湯自体にも癒されるのだと思っています。」

茶の湯は癒しである。その言葉から、茶の湯と出会い、その影響を受け、日々の暮らしの中で自らの茶の湯を表現し続けるハヤシさんにとって、茶の湯の存在がいかに大切であるかがよく伝わってきます。

「僕は習う茶(茶道)はしていませんが、もし『この人に習いたい』と思う方が現れたら、習う茶を始めるかもしれません。それほど、茶とは『ヒト』が現れることなのだと思っています。僕自身、これからも好きな茶を楽しむ日々を続けていきます。」

そう答えるハヤシさんの表情は、穏やかでありながら、これからも続く茶の湯との対峙を楽しんでいるかのように見えました。

ハヤシ ユウジYuji Hayashi

HS オーナー

HS -nara-

  • 住所:奈良県生駒郡安堵町東安堵469-1
  • 営業日:金・土・日・月
  • 営業時間:12:00 ~ 17:00
  • インスタグラム:@hs_kakimoto

HS -kyoto-

  • 住所:住所非公開
  • 営業日: 完全来店予約制
  • インスタグラム:@hs_kyoto_

GIFT by HS

  • 住所: 住所非公開
  • 営業日:一日一組完全予約制
  • インスタグラム:@giftbyhs

TREE

  • 住所:京都府京都市下京区 光悦ビル4 階(4D 扉)
  • 営業日:インスタグラムにて要確認
  • 営業時間:13:00 ~ 17:30
  • インスタグラム:@tree_kakimotoyuki

お仕事、取材に関するお問い合わせは
インスタグラムより

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