道具の特徴とお手入れ
ー焼き物編ー

焼き物の素材について

素材の特徴やお手入れ方法を知って、道具と長く付き合いましょう。
中川政七商店で取り扱う焼き物には、大きく分けて「陶器」「半磁器」「磁器」の3つの種類があります。種類によって、取り扱い方が異なるため、まずはそれぞれの特徴を紹介します。

陶器

陶器

有色粘土を素材とした焼き物で、「土もの」といわれます。焼きあがった際に土の色味が出て、全体に厚みがあります。一つひとつ表情が異なり、温かみのある風合いが特徴です。

半磁器

半磁器

せっ器、ストーンウェアともいわれます。陶器と磁器の中間の性質を持ちます。陶器のような土の風合いを持ちながら、磁器のように吸水性がほとんどないのが特徴です。

磁器

磁器

素地の白さを生かし、鮮やかな色絵が施されます。ガラス成分を多く含むため、薄くても「石もの」といわれるほど硬いのが特徴です。指で軽く弾くと「チン」と高い音がします。

陶器・半磁器・磁器のちがい

陶器 半磁器 磁器
主原料 陶土 陶土と陶石 陶石
吸水性 あり(釉薬が掛かっていても吸い込む) 陶器と磁器の間の性質 ほとんどなし
熱伝導 熱しにくく冷めにくい 陶器と磁器の間の性質 熱しやすく冷めやすい
メリット 保温性が高い(熱しにくく冷めにくい) 陶器と磁器の間の性質 陶器に比べて強度がある
洗った後、拭いたらすぐに乾かせる※カビにくい
漂白剤が使える※吸い込む心配がない為
デメリット 洗った後、完全に乾燥するまでしまえない
カビが生える
磁器に比べて衝撃に弱い
漂白剤が使えない※本体が吸い込んでしまう為
陶器と磁器の間の性質 陶器に比べて急熱急冷に弱い
熱いものが冷めるのが陶器に比べると早い
特徴的な
商品
美濃焼の飯碗 好日茶碗 呉須独楽筋 有田焼の飯碗

焼き物の“ゆらぎ”について

自然の素材を用いて作る焼き物には、さまざまなゆらぎが生じます。
中川政七商店では、一つひとつ異なるゆらぎの表情を、焼き物ならではの個性として味わい、愉しんでいただきたいと考えています。

  • 貫入

    貫入

    陶器のガラス質表面に入る細かいひびを、貫入(かんにゅう)と言います。焼成の際に、素地と釉薬の収縮率の差などによって発生するもので、使用上問題はありません。一つひとつ異なる表情と奥行きを見せてくれるもので、うつわの味わいとしてご理解ください。 貫入のあるうつわは、水分を吸収しやすくなっています。あらかじめ目止めをしたり、使用前に水につけたりすることで、匂いつきや油染みを抑えられます。

  • 鉄粉

    鉄粉

    土や釉薬に元々含まれていた鉄分が、焼成の間に弾けて、黒い点が生じることがあります。焼き物の性質上、どうしても生じる可能性があるもので、使用上問題はありません。 あまりにも大きく目立つものは規格外としていますが、ある程度の黒点は、焼き物ならではの個体差・個性として捉えていただきたいと考えています。

  • 石はぜ

    石はぜ

    素地の中にあった小石が、焼成することで表面に現れるものを、石はぜと言います。荒土を使用したものに多く見られます。大きく目立つものは規格外としていますが、写真にあるようなものは素材の特性として捉えています。

  • ピンホール

    ピンホール

    素地に残った空気や有機物(ホコリなど)、土の凹凸などにより、釉薬をかけて焼成した後に小さな穴が生じたものを、ピンホールといいます。製造上どうしても起こりうる現象ですが、使用上問題ありません。大きすぎるものは、見た目を優先して規格外としていますが、写真にあるような直径1mmほどのピンホールは、許容としています。

  • 釉垂れ

    釉垂れ

    釉薬をうつわに掛ける際、重力によって自然に釉薬が垂れた表情を、「釉垂れ」といいます。焼き物ならではの、自然に生まれた表情としてお愉しみください。

  • 色味/表面の仕上がり

    色味/表面の仕上がり

    釉薬の特性上、窯の中で置かれた位置(焼かれた際の温度や酸素量)によって、色味・表面のツヤ感などに差が出ることがあります。別の商品に見えるようなものは規格外としていますが、風合いが少し異なる程度のものは、個体差・個性として味わっていただきたいと考えています。

  • 絵付け

    絵付け

    手を動かし筆や道具で一つひとつ絵付けや加飾を施したうつわには、絵柄や模様の個体差があります。同じものが一つとしてない、手仕事ならではの筆致をお愉しみください。

目止めについて

目止めは、吸水性のある陶器を使い始める前に行います。
陶器は、目の粗い土で出来ているため、目には見えない無数の穴が空いており、吸水性があります。釉薬がかかっているものでも、完全に水を通さないわけではありません。特に、貫入の入ったものは、色のついた飲料や油などを吸い込んでしまう可能性があります。
目止めを行うことで、匂いつきや染みを抑え、購入時の風合いが長く続きます。

目止めの方法

  1. 鍋に米のとぎ汁と器を入れ、中火で火にかける
  2. 沸騰する寸前で弱火にし、15 分程煮る
  3. 火を止め、とぎ汁につけたまま常温まで冷ます
  4. よく洗い、十分に乾かす

    ※風通しの良い所で、底面を上にして、少なくとも1日以上しっかり乾かしてください

【注意】
沸騰の振動で鍋底と器がぶつかり合い、破損する可能性があります。心配な場合は、鍋底に色抜けの心配のないふきんやキッチンペーパーなどを鍋と器の間に敷くことで衝撃を押さえていただけます。
複数個の器を同時に目止めする際は、ふきんなどで包んで、うつわ同士がぶつからないようにしてください。

【注意】
目止め後は、器がめいっぱい水分を吸った状態ですので、想像以上に乾燥させるのに時間がかかる可能性があります。乾燥が不十分な状態でしまうと、カビの原因になりますのでご注意ください。
※乾いたかどうかの判断材料として、目止め前の乾いた状態の器の重さを計っておくことで、乾いた時の重みの目安になります(目止め後は、デンプンの重みが多少プラスになります)

目止めの頻度

デンプンが貫入や素地の隙間に入ることで、目が埋まりますが、使用しているうちに徐々に効果が薄れてきます。うつわの使用頻度にもよりますが、半年に一度・一年に一度など、定期的に行っていただくことをおすすめします。

陶器の食洗機使用について

食洗機では、洗浄後にうつわを乾燥しますが、表面は乾いていても器本体に吸水された水分が残った状態で、乾燥が完了します。そのため、食洗機内に置いている間に、うつわが水分で蒸れ、湿気臭くなる・カビが発生するといった可能性が高くなります。
陶器の食洗機使用は、可能ではありますが、おすすめはしておりません。