Broom Craftブルームクラフト和歌山の光あふれる
工房で作る厳選素材の
棕櫚箒と掃除道具

日用品の一大産地和歌山県海南市で棕櫚縄を作ってきた深海産業が、同じ棕櫚を使った伝統的な道具である箒を作るべく2020年に立ち上げたブランド。伝統的な製法を元に工夫を重ね、貴重な国産棕櫚箒やブラシなど使いやすく美しい掃除道具を生み出しています。

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STORY

素材の目利きが伝統産業から生み出す、マンション住まいにもフィットする「掃除道具」

ライフスタイルや価値観の変化から、いま改めて注目を集める棕櫚（シュロ）の箒。
音なく静かに使えてフローリングの目地の汚れも掃きだせる、静電気が起きにくく埃が飛び散らないのでゴミが集めやすいのも魅力。フローリングや巾木（はばき）掃除などマンション暮らしにおいてもぴったりの使い勝手が見直されている暮らしの道具です。

棕櫚が自生する、江戸時代からの産地

そんな棕櫚箒は、かつて和歌山県でたくさん作られていました。実はヤシ科の植物である棕櫚が自生しており、江戸時代のトラベルガイド「紀伊国名所図会」には「産物棕櫚皮」とも記されています。当時からこの棕櫚を使って箒やたわしなどを作る産業が盛んで、大正時代には日用品を出荷し和歌山の港まで運ぶ鉄道が引かれていたほど。

温暖なイメージのある和歌山県。山の中には今も棕櫚が自生しています。

「紀伊国名所図会」。真ん中やや左に「産物　棕櫚皮」の文字が見える。

現代にフィットした棕櫚箒を生み出す挑戦

時代は移り変わり、作るものは工業製品が中心となりましたが、今も和歌山県海南市は国内最大の家庭日用品の産地です。

この地で、伝統産業の技法を研究し、現代の生活での使いやすさを常に問いながら、デザインも暮らしにフィットする箒を生み出すブランドが新たに生まれました。棕櫚縄をはじめ創業から70年以上緑化資材を扱ってきた深海産業による新ブランド「Broom Craft」です。

70年に渡って続く同社の棕櫚縄づくり。国産の棕櫚縄ではシェア95％を誇る。

ブランド名である「Broom Craft」は、伝統的なものづくりを表しながら、それらを未来に、日本にとどまらず世界へ。そんな想いが込められています。

工房の周りを田畑が囲み、近くには川が流れ、南北には山の青々とした景色が広がります。アナグマなどの動物や野鳥の姿も。

近くの亀池は和歌山でも指折りの桜の名所。職人さんの仕事後のランニングコースにも。

Broom Craftは「たわしや箒などの生活用品の産地である和歌山で日用品が作りたい」という思いと、「作り手が減っている箒づくりをやってみないか」と相談を受けたことをきっかけに、一念発起して生まれました。棕櫚という素材を扱ってきた強みを生かし、この地のものづくりの伝統を受け継いで自分たちで作ろうと考えたのです。

この挑戦は、既存の箒を分解して研究するところから始まりました。箒の構造を調べ、作りやすさ、実際の使い勝手を改善、また、銅線の位置をまっすぐ揃え、持ち手を和歌山の黒竹に変えることでシャープさを加えるなど、デザインも現代の暮らしに合うように見直しました。

はじまりの1本の箒。試行錯誤を重ねながら商品を開発した時のことを語ってくれた専務の深海耕司さん。

デザイン性と耐久性を兼ね備えた「三つ編み」

かつての棕櫚箒は、熟練の職人さんによる手分量や個人の感覚を頼りにつくる属人性の高いものだったようです。「安定した高い質を保ちながらチームで作ることはできないか？ほしい人に行き渡るよう作り手を増やすことはできないか？もっと使いやすくならないか？」そんな問いを立てた試行錯誤が始まりました。

左がBroom Craftの棕櫚箒。右が伝統的な作りの棕櫚箒。シュロを束ねる素材や、束ね方が異なる。

「箒は柄とのつなぎ部分がポイントです。その強度が出来を左右する大切な部分でもあり、職人の個性が出るところでもあります」と深海さん。現代は銅線を使う部分にかつては糸が巻かれており、模様の出し方やそれぞれ何巻きするかが作り手によって異なっていたのだとか。Broom Craftでは束ねる際に、三つ編みを用いることで強度を増し使用年数を長くすることに成功。ブランドならではのアイコン的デザインにもなりました。

工房では、こんなふうに三つ編みを作っています。

製作工程や道具にも新たなアイデアがたくさん。こちらは、寸法が均一になるように目盛りを付けた作業台。手分量ではなく、チームで安定したものづくりができるようにと考えられました。

制作の様子を見ていると、箒は単に繊維を束ねるだけでなく、複雑な細工で作られていることがよくわかります。さらには、使用時の耐久性を高める独自製作法も新たに生み出しました。
それは、繊維の「折り返し」をして束ねること。繊維を束ねて作られる箒は、どうしても抜けてしまう毛があります。この折り返しがあることで毛が抜けにくくなり、より長く使えるようになっているのです（現在、特許出願中）。

繊維を折り返して作られる箒の玉。真ん中に芯が来るようにするのが一番神経を使うところだそう。

棕櫚はハリとコシが肝心。目利きだからこその選りすぐり素材

「折り返し」をするためには通常より長い毛が必要になります。また、品質の良い棕櫚が手に入らなければ、そもそも良い箒を作ることはできません。質の異なる棕櫚を比べると、長さや太さだけではなく、ハリやコシにも大きな違いがありました。そもそも棕櫚といってもその品質はピンキリ。素材選びの差が、掃きやすさや静電気の起きにくさなどを下支えしているのです。

一般的な棕櫚（下）とBroom Craft（上）のために選りすぐった棕櫚。毛質の違いが見て取れます。適切な環境で育ち安定した品質が保たれた中国産棕櫚は、長きにわたり棕櫚縄づくりを行う中で培われた目利き力、原料メーカーとの信頼関係があってこそ入手できる素材。

「せっかくなので」と、シュロ皮の収穫について解説してくださった社員の津村昂さん。こうして、生えている皮を剥いで原料にしていきます。

剥いだ皮の繊維はこんな状態。布地から糸を解いていくようですね！

使い手としての視点が、今の暮らしの道具をつくる

工房を訪れて印象的だったのは、工房メンバーの和気あいあいとした雰囲気。作り手としてはもちろん、暮らしの中で自身が使っての意見を言い合いながらものづくりをしている様子が見て取れました。「思ったことを伝え合いながら、一緒によいものづくりをしていこうという気持ちがあるんです」とは深海さんの言葉。職人の意見から今も日々新しい商品や作り方のアイデアが生まれているそうです。和歌山の陽射しのもと、職人さんのチームワークで真剣に楽しく生み出されるBroom Craftの道具たち。現代の住まいでこそ、長く使いつづけたい掃除道具です。