


アサクラASAKURA加茂桐箪笥をルーツに、
木材を巧みに生かした
木の雑貨
日本有数の桐箪笥の生産地・新潟県加茂市で、総桐箪笥の製造元として1950年に創業した朝倉家具が作るプロダクトブランド。木の特性を生かすことはもとより、ほぞ組みや挽き曲げ、框組など複雑で精緻な手仕事が求められる桐箪笥づくりの伝統技に、現代ならではのアイデアや発想を組み合わせて〝木だからこそ〟の雑貨や家具を生み出します。
木の個性に正面から向き合うものづくり
たとえば調理道具のターナー(写真中)。柾目の美しいこの1本はわずか20gほどと軽く、厚みはたった3mm。しなやかな質感ゆえに料理を混ぜたり、裏返したりするときにも安定した作業性が楽しめる。木製の小さなおろし棒(下)にいたってはにんにくや生姜を軽い力でキメ細かにすりおろせるだけでなく、そのまま鍋にサッと入れてかき混ぜることができるため、おろし金に残った食材を取るのにイライラなんてこともない……あぁ、便利。こんなふうに使い手の心をくすぐる木のアイテムを生み出すのは新潟県加茂市の「朝倉家具」。75年にわたり、家具づくりに向き合い続けてきた総桐箪笥の製造元です。

日本有数の桐箪笥の生産地、新潟・加茂
新潟県のほぼ中央に位置し、三方を豊かな山々に囲まれた加茂市は220年以上の歴史をもつ桐箪笥の一大産地です。総面積の7割が山間地帯であり天然桐が豊富に入手できたこと、また桐の加工に適した気候風土だったこともあり、製造が盛んになりました。その高い品質は皇室御用達として知られ、昭和51(1976)年には「加茂桐箪笥」として国の伝統的工芸品にも認定されています。

朝倉家具は昭和25(1950)年に総桐箪笥の製造元として創業しました。今もなお伝統工芸士を擁し、桐箪笥づくりの高い技術や知識を持ち合わせています。そのなかで「伝統の技を今に受け継ぐ私たちができること」を模索し、現代に合う家具や雑貨などの製品づくりに着手。新しいプロダクトブランド「ASAKURA」を立ち上げることになりました。
桐箪笥に凝縮されたシビアな技術力
「そもそも桐箪笥の製造工程は、木工製品をつくるための知恵の宝庫。先人が長い時間をかけて、トライ&エラーを繰り返した末に辿り着いたシビアな技術と奥深い知識が詰まっているんです」。そう話すのは3代目の朝倉佑介さん。


桐箪笥といえば、日本生まれ日本育ちの伝統的な家具です。工芸品のような美しい佇まいを誇ることはもちろん、桐という木材の調湿作用によって大切な衣類を湿気から守り、気密性が高いことから防虫・防火効果まで併せ持つ優れもの。職人が手塩にかけて生み出したものは100年以上長持ちすると言われています。
「100年経っても変わらずに堅牢なのは、一つには〝ほぞ組み〟という工法のおかげ。凹凸に加工した桐材同士を組み合わせることで、木にかかる負担を減らすことができるため、釘やネジなどを使うよりもずっと強度のある仕上がりになるんです」


こうした技術は随所に散りばめられています。箪笥の扉に木の反り返りを防ぐ〝框組(かまちぐみ)〟が施され、表面にはずっと触れていたくなるようなスベスベ感をもたらす〝木地仕上げ〟や角を丸くする〝面取り〟、まっすぐな木材を曲げて美しいラインを描くための〝挽き曲げ〟などなど、いくつもの洗練された伝統技の積み重ねによって桐箪笥はできているのです。
木の性質を見極め、個性に寄り添う
もちろん、「そうした技術は木の特性を知ってこそ成り立ちます」と朝倉さん。現在は桐やブナ、栗、桜、杉、檜、ウォールナットなどの木材を取り扱うといいますが、「どの樹種にもそれぞれに個性があり、それを見極めて生かすことがいいものづくりの原点です」

確かに、桐箪笥が日本人の暮らしに根づいたのは「桐自体が水分を吸ったり吐いたりするスポンジみたいな性質の持ち主」だったから。湿気の多い日本において箪笥の中の湿度を一定に保ち、大切な着物を守ってくれたからです。同じようにブナにはブナの、栗なら栗の個性があり、それを読み取り生かすこと。

さらに言えば、同じ樹種でも育った地域や環境によって個性は違い、当然ながら個体差もある。すでにきれいにカット(木取り)した木材を使う工場もあるけれど、同社はすべて自社加工。「木の皮には生育状態が表れる」ため可能な限り〝皮付き〟の木材を仕入れ、そこから木の形状やサイズ、木目、節の有無などを見極めながら木取りをする。手間暇はかかるものの、そのほうが「自分たちが本当に求めるものを、より自由につくることができるから」。木取り工程はある意味、すべての基盤。木工製品づくりにおける大事なカギなのです。
固定概念に囚われず、「あったらいいな」を求めて
ASAKURAのものづくりは、暮らしの中のちょっとした〝気づき〟から生まれることが多いとか。たとえば『毎日トング』は、料理好きの朝倉さんがキッチンでふと感じた「木でつくったトングがあったらいいな」からのスタートでした。「これまでいろいろなトングを使ってきましたが、金属製はフライパンや鍋を傷つけるし、樹脂だと熱で溶けて長持ちしない。木ならその両方をカバーできるんじゃないか……よし、やってみよう、って(笑)」。

選んだ木材は「硬くて、弾力のある新潟県産のブナ」。素材をしっかりつかむことはもちろん、1本でヘラや菜箸としても使えたら便利だろうと、先端の形状や角度、柄の太さや厚さに至るまで試行錯誤を重ねたといいます。なかでも最大の難関はバネ感。真っ直ぐな木という素材でトングの肝ともいえる挟み心地を実現することができるのか……。それを可能にしたのは、ほかならぬ桐箪笥づくりの〝挽き曲げ〟という技術でした。

まずは成型した木地にスリット(溝)を入れます。理想のバネ感を実現するためにスリットの位置や幅、深さに至るまで0.1mm単位で調整したとか。スリットを入れた木地はすぐに曲げるとポキッと折れてしまうため、水に浸けて柔らかくしたうえで、お湯の中に入れて熱を加えながら少しずつ曲げていく。すべてが手作業。職人ならではの経験と感覚がものをいう仕事です。




ようやく完成したトングの使い心地はぜひ、ご自身でお試しを。ほかにも「あったらいいな」から生まれたものには、コの字型をしたこんなものから、


天板が枯山水のような表情を見せるこんなものまで。加茂桐箪笥の古き良き伝統の技や知識を借りながら、ASAKURAの製品はより自由に、より豊かな視点と多彩な表現力をもって今日も作られています。

- 作り手情報
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朝倉家具 所在地:新潟県新潟市
創業:昭和25年(1950年)
公式HP:
https://asakurakagu.co.jp/
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