審査員
日本の様々な手工業品のデザインをし、それら製品群のブランディングや付随するグラフィック等も統合的に手がける。手工業品の生い立ちを踏まえ、行く末を見据えながらデザインしている。ててて協働組合共同創業者・現相談役。
<メッセージ>
工芸産地にデザイナーとして関わるようになった20年程前から各産地で担い手が廃業し、技術・素材・道具が無くなりそうだという話はよく聞いていました。近年は産地がもはや産地と言えない状況になっています。今後産地の再編は不可避だと思っています。新たな産地像とは?それを担うデザイナーとは?既存の産地構造を超え、この地産地匠のコンペが新たな産地像を見出すきっかけになって欲しいと思っています。地域と繋がっているからこその喜びを感じるもの、生活必需品というよりは生活を愛でるものを社会に送り出したいです。
1984年、滋賀県信楽町生まれ。大学在学中にデザインを学ぶためロンドンへ留学。東京の広告制作会社に勤務後、地元の信楽に戻り陶器のデザイン、制作に従事する。2017年に自社スタジオ「NOTA&design」、ギャラリー&ショップ「NOTA_SHOP」を設立。陶器を作る際に粘土同士をくっつけるのり状の接着剤「ノタ」のように、人と人、人ともの、時代や業種など、あらゆるものと考えをつなぐことをテーマにしながら、陶器の制作を中心にグラフィック、プロダクトデザイン、インテリア設計、展示構成、ブランディングなどを手掛け、ギャラリーを併設した「NOTA_SHOP」では、工芸、アート、デザインを分け隔てることなく、様々な作家や商品を紹介している。
<メッセージ>
私は焼物の産地である信楽にて生まれ、現在もこの地に根ざして活動しています。幼少期から産地の変容を間近で見たきた身としては「今」が本当の意味で、産地でのものづくりのラストチャンスなのではないかと危惧しています。原料問題、人口問題、価値観の変化。先延ばしにしていた問題がどんどん目の前に立ち上がってきています。小手先や上辺だけの「ものづくりの時代」は終わりを告げ、新しい志と仕組みが必要になってきました。何のためにモノをつくるのか。誰のためにモノをつくるのか。何が本当につくりたいのか。もう一度ものづくりの原点にたちかえる。次の時代のためにも荒削りでもよいので本質的な取り組みをされている方々、モノに対して愛のある方々を強く応援したいと思います。
1992年生まれ。株式会社HARKEN代表。自然環境における不動産開発「DAICHI」を運営。日本の里山に眠る可食植物の研究をする「日本草木研究所」クリエイティブディレクター。自らも事業を営みながら、さまざまな業態開発やイベント、ブランドの企画、アートディレクションを行う。グッドデザイン賞、iF
Design
Award、日本タイポグラフィ年鑑等受賞。2020年より武蔵野美術大学の非常勤講師を務め、店舗作りにおけるコンセプトメイキングをテーマに教鞭を執っている。
<メッセージ>
岩手県のとある町を訪れたとき、道の駅で美しい壺型の籠に出合いました。きゅっと締まった首元がなんとも綺麗だったのですが、それは地域で昔よく使われた農業用の籠の特徴であり、窪みは紐で腰などに籠を固定するためのものなのだと聞きました。いま自宅でこの籠は単に物入れになっていて、その窪みを活用する予定は今のところないのですが、しかし生活の気配がするその籠に、なんとも言えない愛嬌を感じます。窪みの方は、せっかくなんだし使ってくれよと言っているかもしれないですが、形式に倣うことに捉われない、今の生活と道具との気楽な接点もいいじゃない、と私は思います。言葉がどんどん変化を遂げていくように、暮らしの道具も寛容に意味を履き違えながら、100年続いていくものなのかもしれません。「地産地匠」というものは、地域への敬意を前提にしながらも、自由な誤配を恐れずに、あたらしい挑戦ができるような場でありたいと考えます。
奈良県東吉野村に2006年移住。2015年
国、県、村との事業、シェアとコワーキングの施設「オフィスキャンプ東吉野」を企画・デザインを行い、運営も受託。開業後、同施設で出会った仲間と山村のデザインファーム「合同会社オフィスキャンプ」を設立。2018年、ローカルエリアのコワーキング運営者と共に「一般社団法人ローカルコワークアソシエーション」を設立、全国のコワーキング施設の開業をサポートしている。著書に、新山直広との共著「おもしろい地域には、おもしろいデザイナーがいる」(学芸出版)がある。奈良県生駒市で手がけた「まほうのだがしやチロル堂」がグッドデザイン賞2022の大賞を受賞。2023年デザインと地域のこれからを学ぶ場「LIVE
DESIGN School」を仲間たちと開校。
<メッセージ>
僕自身、地域に身を置くデザイナーの1人として、このアワードにとても大きな期待を寄せている。地域の時代だと言われて久しいが、当の現場はまだまだ厳しい状態が続いている。それが不幸だと思ってはいないが、もったいないことだなとは思う。同じような想いでいる、地域に根ざす、関わるデザイナーはたくさんいるのではないか?残念なことに1人の力は驚くほど小さい。けれどその1人が歩みを止めてしまうと、ゼロになってしまう地域は、日本中にたくさんある。このアワードは、そんな小さな歩みにこそ、光を当てるアワードだと思う。「地産地匠」というタイトルには二度も「地」が出てくる、それは紛れもなく、みなさまのいる地域を指している。このアワードは地域にこそ開かれたアワードなのだ。