地産地匠アワード2024

地産地匠

地産地匠アワード2024

計80件のエントリーの中から一次審査を通過した15点を対象とし、
2024年6月20日、21日に最終審査を実施。
グランプリ1点、準グランプリ1点、優秀賞2点、審査員奨励賞1点が決定し、
11月5日の表彰式当日より、販路支援を開始しました。

商品・応募者カテゴリー

メーカー
グラフメーカー
デザイナー(複数回答可)
グラフデザイナー

グランプリ

グランプリ「めぶく弁当」1
グランプリ「めぶく弁当」2
グランプリ「めぶく弁当」3
グランプリ「めぶく弁当」4
地域名
会津漆器(福島県 猪苗代地域)
商品名
めぶく弁当
メーカー
漆とロック株式会社 貝沼航
デザイナー
Helvetica Design株式会社
 佐藤哲也
貝沼航 佐藤哲也

コンセプト

縄文遺跡から漆製品が出土しているように、防腐・耐水性に優れた漆で保護された器は、時を超えるタイムカプセルです。ウルシという木は、自生せず人が育てないと残っていかない木ですが、漆の国内育成は危機に瀕しています。しかし「種」さえ残せば、ウルシを未来に繋ぐことができるかもしれません。そこで、漆の種を高台裏に埋め込んだ「現代の野山椀」をテーマとした漆器を作ります。器の役割が終わったら、これを土に埋めてもらいます。未来の誰かが種と共に発見してくれるかもしれません。このような願いを込めた器を手にしていただくことで、その資金は、現代において漆文化を途切れさせないよう活動する新たな漆林づくりに活かされます。

このプロダクトのベースとなる活動は、「猪苗代漆林計画」と言います。福島県会津地方、猪苗代湖と磐梯山に囲まれた休耕地で、漆器づくりの原料となる漆の木の植栽・育成活動に取り組む団体です。漆とロックに加えて、地域の若手世代の漆器職人や農家が集い、国産漆の供給不足と農地の獣害問題という2つの課題を解決しながら、子どもたちが自然と触れ合い、多様な担い手が学び育っていく漆林づくりを目指しています。2年間の試験植栽を経て、いよいよ今年からは本格的に活動を展開・発展させていくタイミングとなります。衰退する日本の里山と工芸に活気を取り戻し、未来に繋がる新しいモデルを作っていこうとするプロジェクトです。

受賞コメント

漆も、種も、タイムカプセル。だから、「漆器を土に還す」という行為に、祭礼的な祈りと遊び心を添えて、その思想とプロセスをみんなで楽しむようなものが作れないか。そして、その先に、漆の木を守り育てるコミュニティの繋がりになるような漆器が作れないか。そんな長年の構想を発表する場をずっと考えてきましたが、今回、この地産地匠プロジェクトに応募したのは、①この実験的・挑戦的なプロダクトがどう受け止められるか知りたいということ、②そして折角なら中川政七商店さんと一緒に大きく広げていきたい(届くべき方たちにきちんと届くように)、と思ってのことでした。モノで溢れる現代。新しい物を生み出すこと以上に、物の終わりのデザイン、つまり“物の命の仕舞い方・願いの託し方”を考えてみることが、私たちに とってより大切なことかもしれません。そんな私たちのメッセージを受け止めてくださり、ありがとうございます。 (貝沼)

審査講評

信玄弁当箱の椀蓋の高台の中に漆の木のタネが埋め込まれている。漆の道具がお椀でさえも一般家庭で使われなくなっていく中、漆のモノ作りの生態系をどうやって世界に残していこうかと真剣に考えているチームだと、このタネに込められたメッセージで読み解けました。このお弁当箱がたとえ朽ち果て野に晒されても、埋め込まれたタネから漆の木が生え、漆の可能性は残され開かれている。そんなことを思わせながら使える道具は、地域や歴史をきっと意識させ、漆作りにきっと繋がると思いました。
大治 将典

取り組みとものとの関連性、そして座組みもしっかりしているところを評価しました。まず一次審査の時点ではお椀の形だったのが、信玄弁当にしたことで種が上に来たのが秀逸。収納するときには種が表に見え、使うときは種が下になるのが理にかなっている。また国産の漆は現状、ほとんどが神社仏閣の修繕に使われ出回ることがほとんどない中で、実際に自分たちで植林をし、 その種を循環させようとしている。実際にほとんどの人はこれを埋めないとしても、たとえばプラスチックのお椀との違いを示すメッセージとして寄与できる。すべてのものづくりの基礎となる原料の問題への啓蒙に取り組んでいる意味でも、教育的な観点でも意義が大きいプロダクトだと思います。
加藤 駿介

たったひとつの何かが屈強に存在し続けることでなく、朽ちて、芽生えて、また朽ちて。移ろいながら変わり続けることでむしろ永遠性を会得する極めて日本的な美しさを感じる漆器に心打たれました。機能と意思と意匠が種子というひとつに包括されていることも心地よく、その上でそれが本当に芽吹くのかというリアリティよりも大切なのは意思なのだと強く感じます。
木本 梨絵

漆の器という、昔の日本では、ごく当たり前に食卓にのぼっていた器が、今や絶滅を危惧されるようなものになっている。原料を国内で調達できないというシンプルな問いを、プロダクトの力だけで見せきってしまう強さが、「MEBUKU」という器にはある。もちろん、これは、メーカーおよびデザイナー達が、このアワードに応募する以前から、この問いに向きあい、真摯に活動を続けているという背景が伴ったうえでのプロダクトであるということ、そこがなければ、コンセプトのみが宙に浮いたようなものになってしまうだろうし、グランプリ足りえなかったと思う。すべての工芸が、このような活動をできるわけではないと思うが、そう遠くない未来に、原料のこと、道具のこと、工作機械のこと、今までものづくりの背景にあったさまざまな要素を、つくり手やつかい手が考えざるをえない時代がやってくるはずだ。
坂本 大祐

準グランプリ

準グランプリ「わっぱのケース・バスケット」1
準グランプリ「わっぱのケース・バスケット」2
準グランプリ「わっぱのケース・バスケット」3
準グランプリ「わっぱのケース・バスケット」4
地域名
木工産業(静岡県)
商品名
支障木プロジェクト
「わっぱのケース・バスケット」
メーカー
株式会社iwakagu 岩﨑翔
デザイナー
OTHER DESIGN 西田悠真
岩﨑翔 西田悠真

コンセプト

このケースとバスケットは、支障木という暮らしの支障になる材を使用してつくられています。支障木は、人間が整備した育成林の静かな木々とは違い、自然のままに育つことで自由で、木々の生命を感じる材になります。これにより、節や病すら荒々しい目となり、魅力として製品に残ります。一つの塊のようなバスケット・ケースは最小限の機能として、めんぱの曲げ・木工の接合技術を用いて空間を内部につくり、収納としました。2mmほどの薄い無垢材は、木々の生きた時間を質感として持っています。素朴で重厚な存在感を、軽やかに暮らしにとりいれる。小石を部屋に飾るように、素材に内包された時間を味わう収納になりました。

木々に関する産業が集まる静岡に、iwakaguは工房があります。木と街の距離が近いため、人が関わらないことで起こる不健康な樹木の問題を耳にします。管理しきれず、倒木の危険がある「暮らしに近い支障木」。木工から解決できそうなこの課題に着目しました。支障木は突発的な伐採と少量での処理を求められます。反りやうねりがあり、均一な機械加工には不向きで、一般的にはチップや廃棄物になります。支障木プロジェクトでは、不均質さを個性として捉えなおし、均一な木工品にはない魅力に変換しています。木工品をつくり、使い手に手渡せる立場の木工房から、責任を持って適切に使うこと問題解決をしたいと考えています。

受賞コメント

地方産地の希望となる賞を受賞でき、とても嬉しく思っています。地域木材の中で「支障木」に着目し、ここまで4年ほどの月日が経ちました。静岡の関係者・職人たちのご協力に感謝しています。気候変動による倒木や管理できない木々、支障木は静岡地域だけでなく全国にある課題です。この支障ある木々を「魅力」として伝え、価値があるものと認識してもらえるよう活動を続けていきます。私たちの活動をきっかけに、全国で新たな解決方法や協業が起こることを願っています。また、地方ではものづくりの担い手が減っています。技術や知識などの伝え方にも責任を持ち、若い世代に継承をしていきたいと思います。

審査講評

街の中に生えてきて邪魔者扱いされている支障木を材料にしたワッパのプロダクトシリーズ。山の仕事と家具産地が近い静岡だからこそできたチームの提案だと感じました。山の仕事の担い手がいない、街の支障木を手入れする人がいない、そんなネガティブをポジティブに変えて、新たな産地作りが始まっていることにとても勇気をもらえました。
大治 将典

グランプリ同様、座組みがしっかりあり、ストーリーだけで終わらず最後の仕上げまでクオリティが高い。ものづくりの基礎となる原料の問題に今の段階から着目して、静岡ならではのチームで新しい仕組みを構築しているのが面白いです。地元の他ジャンル同士のプレーヤーが組むと、リテラシーが違ってうまく進まないことも多いなかで、すごく健康的なチームに感じました。そして、普通に生活していると見落としてしまうような問題に、プロダクトの魅力を通して気づかせる可能性がある。今後どの産地でも向き合うことになる原料問題への啓蒙という意味でも、高く評価したいと思いました。
加藤 駿介

支障木というのは「交通や生活に支障を及ぼす可能性のある樹木」を指すのだといいます。様々な国の街を行き来しながら思うのは、他国では屋久杉のような巨木がもはや自信を持って堂々街路を防ぐのをよく見かけるのに対して、日本の街路樹はすんと上品に佇む小さなものが多いということです。きっと「支障木」と定義される範囲が比較的広いのであろうこの国で、行き場を失ったはずの木々がその地域の人々の手によって再び息を吹き返すということがすでに実際に行われているということに大きな希望を抱きました。
木本 梨絵

街の中で目にする庭木や街路樹といった木々。そのなかで、生活に支障をきたし、伐採された木々を原料につくられた木製品。アイデアとして、思いついた人たちはきっと他にもいるだろうと思う。けれど、それを実現させてしまえるプロジェクトチームのつながりが、このプロダクトを通して浮かびあがってくる。支障木を見つける人、伐採する人、運搬し製材する人、加工する人、流通させる人、必要な要素を担う全ての人が地域のなかにいる。それを僕たちは産地と呼ぶんだろう。そういった意味で、「支障木プロジェクト」のあるこの地域は、新たな産地といっていいと思う。このプロジェクトも、ものづくりと原材料という問いに、また違った角度の解を示してくれている。
坂本 大祐

優秀賞

優秀賞「刺繍ポシェット」1
優秀賞「刺繍ポシェット」2
優秀賞「刺繍ポシェット」3
優秀賞「刺繍ポシェット」4
地域名
桐生織物・刺繍(群馬県 桐生市)
商品名
トリプル・オゥ「刺繍ポシェット」
メーカー
(株)笠盛 野村文子
デザイナー
(株)笠盛 片倉洋一
野村文子 片倉洋一

コンセプト

平面から立体になる着物から着想し、一枚のテキスタイルからできた刺繍ポシェット。革でもカゴでもない刺繍ならではの透け感としなやかさ、軽さがポイントです。美しいフォルムを保つように刺繍の構造から柄を考え機能美を追求しました。流行のスピードが早まる一方で、自分の持つモノにストーリーやオリジナリティを感じたいという熱が高まっております。このポシェットは、使い手に刺繍の新しい可能性を提案することで、ファッションの幅を広げつつ、日本の刺繍技術を身近に感じることが出来るプロダクトです。

刺繍加工は安価に出来る海外工場に流れ、桐生を含め国内の刺繍メーカーは年々少なくなっております。刺繍の新しい表現を生み出し、刺繍が人々の生活により身近になることで、日本の刺繍技術を広めたい。そんな想いから刺繍のみで出来るプロダクトの開発に着手しました。通常刺繍は布などの土台となるものに縫いつけて形を作ります。笠盛のオリジナル刺繍であるカサモリレースは、土台を使わず糸の重なりだけで形を作る技術で、刺繍の魅力がダイレクトに伝わります。今回その技術を応用してバッグをつくります。絹織物の産地“桐生”の着物文化から発想し、「平面から立体に変わる」テキスタイルで暮らしにフィットするプロダクトを考えました。

受賞コメント

この度は優秀賞を頂き誠にありがとうございます。この刺しゅうポシェットは日本の刺繍技術を多くの人に届けたいとの思いで生まれました。その為、完成して終わりではなく使われて初めて価値のあるものになります。技術としてはまだまだ進化途中です。この受賞をきっかけに使い手の意見と刺繍の可能性を組み合わせて、ニーズに合った技術開発を続けて参りたいと思います。そうした先に、刺繍や織物の産地「桐生」が、私たちのプロダクトを通して世界中の人に親しまれる未来を期待しております。

審査講評

産地の粋の技術である刺繍を何かに施すのでなく刺繍そのもので形作られた製品。発想のラディカルな転換に新鮮さを感じた。私としては刺繍糸の柔らかさなどが反映された製品の方がより刺繍由来の製品だと感じられて良いのではと感じたが、刺繍のみでここまで張りが出せるのは製品の可能性を広げる意味では良い面もあるなと思いました。
大治 将典

アパレルに近いものが難しいのは、ブランド力が問われるところ。もともと分業制でデザイナーとメーカーが分かれているなかで、この技術を使って他のブランドと協力していくのも1つの産地のあり方だと思います。ただそれだと、技術は残ったとしてもメーカーのファンが増えていくわけではない。そのなかで、既にアクセサリーを通して自分たちのブランドを積み上げてきた上に、今回新しくバッグを作った。そのチャレンジを評価したいです。今後、これがパイロット商品となり、刺繍の面白い技術を世の中に見せるブランドに成長していくような着地点も合わせて考えられていると、なお良いと思います。
加藤 駿介

和装の需要が減る中で過去にとらわれず生み出されたデザインにはおおらかな懐かしさと新しさが介在し、思わず「欲しい!」と惹きつけられてしまいます。既存のファッションブランドへの技術提供にとどまらず、こうしてメーカー自身が技術の確かさを物にのせて伝えていくことの大きな意味と、そもそもそんなことを知らずともキュンと心を突く純粋なときめきを感じます。
木本 梨絵

刺繍が構造になり、立体になる。これも革新的なアイデアが形になって現れたプロダクトだ。見たことないものを生み出す、という点において工芸よりもファッションの方に分がある。それは、必然性や意味性を、強く求めない使用条件からくるのだろう。身につけることで、嬉しくなる、気分がよくなる、元気になる。そういう力がファッションにはある。翻って、このポシェットは、ファッションなのか、工芸なのか?立ち位置の難しさはある。
坂本 大祐

優秀賞

優秀賞「越前瓦器」1
優秀賞「越前瓦器」2
優秀賞「越前瓦器」3
地域名
越前瓦(福井県 越前市)
商品名
越前瓦器 ECHIZEN GAKI
メーカー
株式会社越前セラミカ
 石山享史
デザイナー
高橋孝治デザイン事務所
 高橋孝治
プロデューサー
合同会社ツギ
 新山直広
石山享史 高橋孝治 新山直広

コンセプト

越前瓦の原料や原料処理、成型、焼成技術を生かしたテーブルウェア。唯一作図し制作した口金を真空土練機にセットし押し出される土板を異なる長さに切り分け、カトラリーレストのような小物からパーティーにも対応する超長角皿まで6型を成型。焼締めの肌の焼きむらを狙って、あえてトンネル窯での窯焚きの可動し始めから焼く。同じ断面形状をもつ簡素なものでありながら、酸化・還元の両方で施釉、焼き締めの多くの土味のバリエーションを生む。

越前セラミカの精土工場では、土搬入業者に向け「越前瓦の品質向上は常に原土に左右されるもので原土の搬入については常に細心の注意を願い、(省略)」と看板を掲げている。原土から粒度の大きな砂利を除き灰を混ぜるだけのシンプルな原料処理ゆえ。看板を見た時、地元の土の味と瓦の成型・焼成精度を生かした量産のやきものがつくれると思った。やきものらしい土味、焼き味や個体差は特に量産品については複雑化した商流によって売りにくいものとして扱われ、個体差の出ない調合された粘土や均一の佇まいのやきものが多く出回ることになった。しかしながら、越前瓦の土づくりはおおらかで本来の焼き物らしさを備えていてアイデアの中心になる。

受賞コメント

日用品は使われてこそ。発売や当コンペでの受賞を経てようやくスタートラインに立てた。量産して判明する課題の解決にもしっかり伴走したい。好評を得たなら、新商品開発や他の瓦産地との協同も実現したい。(高橋)
越前瓦の魅力を発信する機会をいただき、大きな喜びを感じています。自然の原料を活かし、瓦製造の技術で生み出した越前瓦器は、原料や窯の雰囲気で一つ一つが違う表情を出す製品に仕上がりました。全国の食卓を越前瓦器が彩ることを楽しみにしています。(石山)
越前セラミカさんに押しかけてスタートしたプロジェクトが、このような賞をいただき嬉しく思います。これからも産地に根付くデザイナーとして、産地メーカー(内)とプロダクトデザイナー(外)をつなぐ存在として精進します。(新山)

審査講評

瓦作りの押出成形の仕組みを使った板皿。元々の瓦の産地において無理なく製造でき、瓦に比べ単価を上げられる商品ですが、他の産地の器に比べれば比較的安価に作れ、他産地では追従しにくい製品群なのが秀逸です。押し出す長さで製品の種類を増やしている。断面形状や釉薬の選択、パッケージやカタログなどのバランスの良さなど、地匠の部分にも光るものがありました。
大治 将典

押出成形という瓦の作り方を転用していて、メーカーに技術的に無理がない。値段も瓦1枚だと400円のところが1980円になる。普通より高い温度で焼いているから割れづらく、スタッキング性があって収納もしやすい。いろんな意味で無理がなく、トータルのバランスがとても良いプロダクトです。その完成度の高さから、 「匠」の側、デザイナーがメーカーのことをちゃんと理解しているんだということが分かります。六古窯の産地のなかで一番、作家もメーカーも少ない越前で、瓦のメーカーからこの商品が生まれた、という意義は大きいと思います。
加藤 駿介

「屋根」と「器」と聞くと一見まったく異なるもののように感じます。しかし瓦を単に屋根のマテリアルとして見るのではなく「瓦は日常背景に人間生活の背景として一歩引いて馴染むものである」という定義で俯瞰してみたときに日々の中で食事をのせる背景となる器に繋がるというのはとても自然な流れです。古くからあるものづくりを今に昇華させる時の視点として理想の俯瞰的なものごとの捉え方の美しさが形の美しさをさらに彩ります。
木本 梨絵

瓦が器になる。そのダイナミズムがこのプロダクトの真骨頂だ。なぜ今までなかったの?と思うような自然なかたちを持つプロダクトでもある。瓦は焼物なので、それは器にもなる。聞くと当たり前のようなアイデアこそ、実現させるためには、たくさんの工夫が必要になる。サイズ感、質感、スタッキングなどのギミック、どれも、瓦がつくられる工程をよく理解した人の合理的な選択で、それがかたちに必然性を与えている。
坂本 大祐

審査総評

審査員 大治 将典
他のプロダクトコンペは提案型のコンペが多い中で、本コンペは製品を継続的に生産し販売していくことを前提としたハードルの高いコンペです。当初応募が集まるかが不安でしたが、蓋を開けてみれた、たくさんの面白い提案が集まりホッとしました。応募全体を見た時に、地域の問題解決や目の付け所などの「地産」の部分に光るものが多かったのですが、それをまとめるプロダクトデザインの「地匠」の部分に「後もう一歩」なものがとても多かったです。どんなに取り組みや座組が良くても、モノの魅力や使い勝手がイマイチだとやはり使い手は手に取ってくれません。プレゼンはいくらでも盛ることができますが、プロダクトそのものは嘘はつけないし盛ることはできないです。もっと地域にプロダクトデザインが必要であることを地域の人たちに認識してもらいたい。地域で工芸的分野でプロダクトデザインの仕事を続けることはとても大変です。それを応援していく取り組みとしても地産地匠を続けていきたいと思いました。

大治 将典

審査員 加藤 駿介
僕は信楽が地元で、産地の中から長く日本のものづくりを見てきました。今回、東北からグランプリが出たり、惜しくも選外となったものも含めて福井に良いものが多かったりしたのは、この十数年、しっかりと種まきをしてきたからなんだなと思います。産地のものづくりがある程度の水準まで到達するためには、10年、20年という時間がかかります。今回の審査では、バブル以降の盛り上がりが一度は衰えてしまった産地で、再び地道に種まきをしてきた 30年間が芽吹いてきているように感じました。これから、海外から原料を入れることや手で作ることの是非が問われ、結局「産地って何なんだろう?」という問いも出てくると思います。でも他の国に目を向けて見ると、地域単位の小さな集団や個人がこれだけものづくりに携わり、商品を提案できている日本はすごく稀有な存在でもある。まだまだ、日本のものづくりは捨てたものではない。そういう可能性が発見できることにも、このアワードの意義があるんじゃないかと思います。

加藤 駿介

審査員 木本 梨絵
どこの本屋に行っても日本に関する書籍があり、他の国のことを知らない外国人がしかし日本文化のことはよく知っている。個人的な話になりますが、審査の時期の少し前に海外に移住をしたところで、ありきたりではありますが世界から見た日本の圧倒的な立ち位置をひしひし体感する渦中で皆さんのものづくりに触れる形となりました。これはもちろん今に始まった話ではなく、振り返れば19世紀後半のジャポニズムの頃から変わらず私たちはユニークであり続けている。形を変えることを恐れずに、しかし土着の思いは揺るがずに。強い意志で後世につづく屈強な美しさを追求する姿に、だから日本はいつまでも絶対的なのだと頷かされました。ここからがいよいよ始まりで、明確な販路を軸に市場と正しく繋がり広がっていくために私たち一人ひとりに何ができるのかということを考え取り組んでいきたいです。

木本 梨絵

審査員 坂本 大祐
すべての受賞者が決まってみて、あらためてこのアワードは、ものの良し悪しを問うアワードであるとともに、そのものが生まれる背景のあり方をも問う、そんなアワードであることを再認識した。グランプリ、準グランプリともに、ものづくりの根源とも言うべき、原料のことに目を向け、それぞれの立場からみえる解を、「もの」に昇華させている。これから先もつづいいていくであろうこのアワードの、大事な指針をいただいた。そんな気持ちでいる。資源やエネルギーの有限性が叫ばれるようになって久しいが、この時代において、限りあるそれらをつかってでも、つくられ、つくりつづけられるべき「もの」であるか否か?そんなことを考えずにはいられない。とはいえ、「もの」そのものが持つ楽しさは一方で十分存在意義になりえるとも思う。そんな矛盾を抱えながら、その年なりの着地点を見出せればと思う。ご応募くださった全てのみなさま、一緒に審査をしてくださった審査員のみなさま、地産地匠アワードのスタッフのみなさま、中川政七商店のみなさま、貴重な機会をいただきありがとうございました。

坂本 大祐

販路支援

販路支援 中川政七商店店舗とオンラインショップ

2024年11月5日の表彰式当日より、販路支援を開始しました。
中川政七商店店舗とオンラインショップを中心にご購入いただけます。

※取り扱い店舗は変更になる可能性があります。最新の販売状況はお問い合わせフォームよりご確認ください。

<オンラインショップ企画展>